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2013-10-17 コンドームの効果を、技術者視点で娘に淡々と語れる人 [長年日記]

■(1)この日記は、江端が2013年3月29日に、原文を残したまま、かつ、正確で ない記載については、その旨を記載して修正を試みたものです。また、日記で は語られていない事実についても追記を行っています。加えて、私の見解につ いても記載をしています。 ■(2)私が、「明らかな人権侵害に該当する」と判断し、上記(1)の方法によっ ても、なお、それが回避できないと判断した箇所については、その旨を記載し て削除を実施しました。 ■(3)上記(1)(2)により、記載当初のイメージの維持は断念しました。本日記 は、江端の無知と人権侵害の実例のサンプルとして開示し、私以外の誰かが同 じことを実施しないこと、数多くのの批判によって正しい知識への橋渡しとな ることを期待して、本日記を残置するものです。 ■(4)この記載の内容はデリケートかつ難しい問題を多数含むものであり、私 個人としては、この日記の内容が、安易な気持で拡散されることを望んでおり ません。 ■(5)上記(1)~(3)の記載については、江端が全面的に責任と批判を負うもの ですが、この日記の拡散行為については、責任は追えません。 ■(6)それでも、なお拡散を試みようとする人は、その拡散行為について、全面的 な責任と批判を負うことを覚悟して実施して下さい。

家族で、3億円事件を扱うドラマ「クロコーチ」を見ていました。

そこで主役の黒河内刑事が、愛人を殺した犯人に対して「ゴムはしていたのか?」と尋ねるシーンがありました。

二人の娘から、同時に「ゴムって何?」と尋ねられて、夫婦で固まってしまいました。

しかし、小5の次女はともかく、中3の長女が暗語として「ゴム」を知らないのは、半端ではなくマズイ状況であると思いました。

で、私が何をしたか(*1)というと、会社帰りに、ドラッグストアで一番安い420円のモノを購入したのです。

(*1)実際には、この打ち合わせの前に、以下を実施している。
■嫁さんと長時間に渡る打ち合わせ(意義、方法、アプローチ)
■webサイト等による文献や書籍調査
■他の人のコメントインタビュー調査
■説明の項目と順番の検討
■話を重くもせず軽くもしない、プレゼンテーションの事前練習
■娘からの当該「ゴム」に関するプレゼン参加の意思確認と実施日時の指定

コンドームです。

-----

深夜11時半すぎ、次女が部屋で眠ったのを確認して、長女を掴まえて、リビングのテーブルで話を始めました。

江端:「最初に確認したいが、SEXの仕組みと意義については理解しているんだよな」

長女:「一応。学校でも習ったし」

江端:「では、『ゴム』を教える。これだ。正式名称は『コンドーム』と言われるものだ」

と言いつつ、コンドームの箱を開けて、中身を取り出して、ピンク色のゴムの物体を、伸ばして長女に見せる私。

長女:「コンドームなら知っているけど。そうか、これが、実物のコンドームかー」

江端:「簡単に言えばゴム風船だ。これを男性器に被せて、精液の流出を防ぐことで、受精を妨げる役割をする。もっともポピュラーな避妊具だ」

長女:「そりゃ、分かるんだけど、なんで、わざわざ私にそんなもの見せる訳?」

江端:「コンドームが単なる避妊具にすぎないという認識では、お前の命にかかわると思ったからだ」

長女:「え? 避妊具なんでしょ?」

江端:「避妊の手段は、まだ沢山ある。例えば女性の膣に薬品を入れて、精子を全滅させるという避妊手段もある。一方、単に女性の性器の外に射精すれば、それで安全に避妊できると『誤解』をしているバカもまだいるようだが」

長女:「パパが何を言いたいのか、よく分からないのだけど?」

江端:「コンドームの最大の目的は、『エイズの感染防止』(*2)だ」

(*2)これは正しくない。
■正確には「HIVおよび性感染症の予防」と言うべきである。
(出展:厚生労働省HP 「感染症・予防接種情報」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html)

長女:「エイズ・・・」

江端:「後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)。詳しいことは省略するが、感染すると潜伏期間が恐しく長く(10年程度)(*3)、発病すれば、原則死に至る病(やまい)だ。現在、完全に治癒できるクスリは存在しない」

(*3)これは正しくない。
■HIVとは、Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)のこと
で、免疫機能を有する細胞の構成物質(Tリンパ球等)に感染するウイルス(この
段階では免疫機能は担保されている)。
■エイズとは、HIVが増殖することによって免疫機能を有する細胞が減ってい
く状態(×病気)。これによって、免疫機能が失われていき、普段感染しない病
気に感染しやすくなることも含めてエイズと呼ぶこともある。
(出展:全国HIV/エイズ検査・相談窓口情報サイト
http://www.hivkensa.com/whatis/)
■HIVからエイズに至る期間は諸説ある。20年前は10年の潜伏期間と言われて
いたが、4年、あるいはもっと短いという報告もある。
(出展:
http://www.hiv-support.com/hiv%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98/%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%AE%E6%BD%9C%E4%BC%8F%E6%9C%9F%E9%96%93%E3%81%8C%E7%9F%AD%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B.html)

長女:「・・・」

江端:「日常の生活では、感染率は恐しく低い。接触感染やキスでも染感は難しい(*4)。ところが、SEXにおいては、感染率が跳ね上がるんだ(*5)。SEXというのは、性器の激しい摩擦運動を基本とするものだから」

(*4)この記載は正しくない。
■「難しい」ではなく「ない」が正しい。感染経路は、(a)性的接触(膣、
アナル、フェラチオ等)、(b)血液(輸血または、注射器共有等)、(c)出産時の
母子感染の3種類に限定される。
(出展:厚生労働省HP 「ストップエイズ!今は「不治の特別な病」ではなく、
コントロール可能な病気です。まずは早めに「HIV検査」を」
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201305/2.html)

(*5)この記載は正しくない。
■「感染率は、(a)性的接触場合1回あたり1%未満、(b1)輸血の場合90%、
(b2)注射器共有一回あたり1%未満、母子感染(何の対策も取らなかった場合
30%)」が正しい。
(出展:
http://www.hiv-support.com/hiv%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98/%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%AE%E6%BD%9C%E4%BC%8F%E6%9C%9F%E9%96%93%E3%81%8C%E7%9F%AD%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B.html,http://idsc.nih.go.jp/iasr/31/366/dj3663.html)

長女:「パパ。もうちょっと、その激しい表現をなんとかできないかな?」

江端:「恥しがっている場合じゃない。お前がHIVやエイズのことを知らないということは、中学3年生レベルは同程度と考えるべきだろう。『ゴム→コンドーム→HIV、エイズ予防』と、直線的に思い出すくらいの教育が、されていないということだ。パパにはこっちのほうがショックだ」(*6)

(*6)本日記における、長女と私との会話の態様については以下の批判があった
ことを報告する。(*7)
■江端家にて実施した、コンドームに関する父娘の態様は、パワハラ、セクハ
ラに該当する可能性がある。
■江端家においては、父娘や夫婦の長年に渡る信頼関係や、特に夫婦による事
前の徹底的な議論、話の進め方の徹底的なシミュレーション、娘へのこの会話
への事前の同意確認、および、和気藹々とした雰囲気での家族の会話を実施し
たか ―― などは、問題ではなくこのような内容は「特例扱い」とすべきであ
る。
■この日記を読んだ読者による安易な模倣行為により、子どもに心的外傷後ス
トレス障害(PTSD)を発症させる可能性は否定できない。江端は日記を公開する
に際して、私的な開示(楽しく読める部分だけ公開する)だけではなく、それが
(江端家だけの問題ではなく)公的に与える影響まで配慮する責任がある。

(*7)上記に対する江端見解は以下の通り。
■江端は、上記の批判に同意し、その内容を全面的に受けいれる。
■従って、この日記を読んでいる読者に対しては、『かかる日記のような会話
が、子どもの心を回復不可能な程度にまで傷付ける可能性があることを十分に
考慮し』、『徹底的な事前検討』を行った上で、『リスクを十二分に覚悟した
上で、完全な自己の責任において実施』することを提言することで、この批判
に対する回答としたい。
■この批判に対して「日記の掲載停止」という手段を取らなかったことは、冒
頭で説明した通りである。なお、「日記の掲載停止」を提言する人がいれば、
私はその理由をこの日記の代替として掲載し、直ちに当該日記の削除に応じる
準備がある。正当な理由があれば、この日記を掲載する意義を、私自身が見い
出せなくなる為である。

長女:「・・・」

江端:「女性にとって、妊娠のリスクは相当なものだろうが、エイズには『死のリスク』があるんだ(*8)」

(*8)これは正しくない。
■「死のリスク」という表現は妥当ではない。HIV感染はかつての致死的疾患
から、慢性疾患に変わりつつある。
■かつて、数年の潜伏期間の後にエイズを発症するとおよそ2年くらいで死亡
する患者がほとんどで、例えば25歳でHIVに感染すると、平均余命はわずかに7
年だった。
■現在は、平均余命は40年と言われており今後さらに伸びることが期待されて
いる。
■但し、HIV感染に気がつかないまま、エイズを発症すると、2.3年後の生存率
99%が80%まで下落する。
■しかし、日本では、HIV感染に気がつかないままエイズを発症する人が30%も
いるという事実がある。
(出展:HIV(エイズ)検査完全ガイド
http://www.hiv-support.com/hiv%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82/hiv%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82.html)

長女:「わかった! わかった! わかったけど、で、私にどうしろ、と?」

江端:「このコンドームを常時携帯しろ。サイフの中がベストだが、鞄の奥でも構わん」(*9)

(*9)これは正しくない。
■財布の中の保管は、摩擦などによるゴムの劣化が原因で破れやすくなるとい
う問題があある。また、タンスで保管していると、防虫剤の影響で劣化してし
まうこともある。
(出展:正しいコンドームの保管方法 https://am-our.com/sex/134/8524/?p=3)
■この他、直射日光、高温多湿の場所等も避ける。化粧ポーチも化学反応する
可能性があるので避ける必要があるが、これ以外の場所であれば、それほど神
経質になる必要はない。
■コンドームの使用期限は、コンドーム工業会において5年間と決められてい
る。
(出展:コンドームの使用期限について
http://www.nakanishi-condom.co.jp/html/01.html)

長女:「えーーー! ヤダよーー!! 彼氏もいないのに、必要ないじゃん?」

江端:「世の中の男が、全て理論的で理性的な生き物であれば、女性が性犯罪の被害者になるはずはない。愛がなくてもSEXはできるぞ。特に男は全く問題ない」

長女:「・・・」

江端:「エイズの怖いところは、潜伏期間の恐しいほどの長さだ。お前の将来の彼氏の、元カノの、元カレの、元カノの、元カレが感染していたとしていれば、その関係者、間違いなく全員感染していて、そして、今でも、その感染を知らないで、元気に毎日生活しているぞ」(*10)

(*10)この記載について、真面目に試算をしてみた。
■「お前(長女)の彼氏(E)の元カノ(D)の、元カレ(C)の、元カノ(B)の、元カレ
(A)」において、最後の「元カレ(A)」がHIVの感染者だったとする。
■条件として、SEX1回辺りの感染率を1%と仮定して、それぞれのカップルは1
年間つきあい、平均1週間に1回コンドームなしのSEXをしていたとする(52回/
年)。
■A→Bに感染する確率は、1-(1-0.01)^52 = 0.40703 約41%でとなる。
■B→Cに感染する確率は、(0.41)^2 = 0.1656  約17%。
■最終的に、長女の感染リスクは、(0.41)^5 = 0.01117 となり 約1% となる。
■これを"41%"のリスクと考えるか、"1%"のリスクと考えるのかは、読者の判
断に委ねたい(私は1%でも十分に大きな数値だと考える)
■因みに、A→BのコンドームなしのSEXの場合、HIVの感染リスクは、週2回/1
年では63%に、週3回/1年では78%になる。

長女:「・・・」

江端:「それとな、このコンドームを装着するSEXって、けっこう『気持ち悪い』んだ。多分、男性の殆どは、コンドームを付けないでSEXしたいと思っている。色々理由をつけて、コンドームを拒否する男もいる」

長女:「なんで、そんなことが分かるの?」

江端:「その気持ちが凄く理解できるからだ」

長女:「!」

江端:「というか、コンドームすると勃起が弱くなって、SEXできなくなることが結構、多かったんだ。でな、あれ、行為の最中にSEXが中断してしまうのは、男にとっては『死ぬほど恥しい』」

長女:「あのさ、話の途中で何だけど、私、父親とこういう話をしている状況が『死ぬほど恥しい』んだけど」

江端:「我慢しろ。もう少しで終わる」

長女:「わかった」

■繰り返すが、このような会話を行うだけの、長年に渡る家庭内でのコミュニ
ケーション体力を培かってきたか否かを、正確に見極めることが必要であると
考える。安易なマネは危険である。
■また、ここからの以下の会話「8つのフレーズ」は、「私が批判されればす
む」というレベルの内容には留まらず、HIV感染者の方の人権を回復不能なま
でに著しく毀損するものと判断した。
■当該「8つのフレーズ」に関しては、補正できる内容ではないと考え、この
部分の公開を断念した。
■但し、研究、学術目的等、その他正当な理由があって、この「8つのフレー
ズ」の開示を求める方がいたら、人権侵害にならないことを絶対的な条件とし
て、メールによる転送等の相談に応じる。

江端:「ま、何が言いたいのかというと、コンドームの使用を拒否する男は、お前を愛していない男、と同義であると考えて良い、ということだ」

長女:「・・・」

江端:「『ということを、父親から言われたのだけど』と付け加えると、さらに効果的だろう」

長女:「・・・」

江端:「『コンドームを使ったら、その使用数を父に報告しろとも言われている』とまで、言い切れば、完璧だろう」

長女:「ママー、もう、パパと話すの嫌だよーー」

嫁さん:「まあ『コンドームは必ず使うようにしなさい』ということよ」

江端:「で、持ち歩くんだろうな?」

長女:「やだよ!」

江端:「じゃあ、机の引き出しか、ベッドの下に入れておく、とか」

長女:「パパは、自宅で娘が『やっていて』もいいのか!」

江端:「そりゃ、よかないが、娘の死のリスクに比べれば、受忍できる範囲だ」

長女:「ママー! パパを、なんとかしてよーーー!!」

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という訳で、折角、私の買ってきたコンドームは、タンスの引き出し(*11)に格納されることになりました。

(*11)この保管方法には問題がある(前述)。

その後、コンドームに1リットル近い水が入ることを実験して、日本の技術力を自慢したり、現状の日本における生殖技術について娘に語っていたら、午前2時近くになってしまいました。

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翌朝、嫁さんに車で駅までおくって貰いながら、二人で会話をしていました。

江端:「あの手の話をするのは、母親の方がプロパーだと思うんだけどな」

嫁さん:「コンドームの効果を、技術者視点で淡々と娘に語れる人がいるんだから、別にいいんじゃないの?」