少子化対策の「技術サイド」からのアプローチに関するアンケート


アンケート用紙の内容(全文)


1. 著者の江端は、人口減少対策に対して、「冷凍卵子」「冷凍精子」保存技術の積極的活用を提言する予定です。これに対して、あなたはどう思いますか。

A:賛成、B:反対、C:判断できないまたは回答を留保する


2. 著者の江端は、女性の出産限界年齢対策として「人口子宮装置(体外で受精から乳幼児育成までの全行程を行う装置)」技術の開発を提案する予定です。これに対して、あなたはどう思いますか。

A:賛成、B:反対、C:判断できないまたは回答を留保する


3. 「人口子宮装置(体外で受精から乳幼児までの育成を行う装置)」で誕生した子どもと、通常の妊娠によって生れた子どもには、個体としての差異は全くないものとして、その子どもの保護者になったつもりで、以下をお答え下さい。


(1)この2種類の子どもには違いがあると思いますか(理由や論理付けは一切不要)

A:思う、B:思わない、C:判断できないまたは回答を留保する


(2)人口子宮装置によって生まれた子どもを愛せる思いますか

A:思う、B:思わない、C:判断できないまたは回答を留保する


4. 「技術」によって人口減少問題を解決する必要はあるか(この問題を放置すると、日本国民は消滅すると仮定します)。

A:ある、B:ない、C:判断できないまたは回答を留保する


5. ご年齢を教えて下さい

A:20歳未満、B:20〜24歳、C:25〜29歳、D:30〜34歳、E:35〜39歳、F:40〜44歳、G:45〜49歳、H:50〜54歳、I:55〜59歳、J:60〜65歳、K:65〜69歳、L:70〜74歳、M:75〜79歳、N:80〜84歳、0:85〜89歳、P:90〜95歳、Q:95〜99歳、R:100歳以上


5. ご性別を教えて下さい

A:女性、B:男性、C:後発的な女性、D:後発的な男性


6. 未婚、既婚を教えて下さい。

A:未婚、B:既婚


7. 江端に言っておきたいことがあったら御自由にどうぞ


アンケート結果(概要)



上記「7. 江端に言っておきたいことがあったら御自由にどうぞ」で頂いたコメント(全文)

Aさん(女性/15歳/未婚)

パパ。もっと過激でない解決方法を思いつかないの?

Bさん(女性/20歳/未婚)

大変勉強になるコラムでございました。

いくつか私が思った事を箇条書きでメモ致します。

ご参考になるかは別として、自分の勝手な意見ですので、怒らないで下さい。笑

一、人口的に子を作るのはいかがなものかと。と言うのも、「出産」というのは、生きている人間が行う事が出来る数少ないイベントであるからです。(ベタで言うと涙を流すですとか…機械には出来ませんよね?)

現在の機械技術がどこまで発達しているかは存じ上げませんが(勉強不足ですみません)、やはり「人間」として人口的に「人間」を作りだすのはどうかな…と。

二、確かに少子化は問題です。そして今の時代女性も多く社会で活躍し、結婚しているものの子供まで欲しがらない女性が増えて来ているのも事実です。

が、問題なのは、女性が仕事をしなくても子育てがきる環境に日本はまだなっていないというのが現状ではないでしょうか。

(仕事が好きで好きで、たまらくてやめられない!という人も中にはいるとは思いますが…)何でも国のせいにするのは嫌ですが、そもそも、その家庭の世帯主が家族を支えていけるだけの財産があれば、問題ないわけで…。

そしたら女性も仕事へ外へ…なんて事も、共働きという言葉もなくなると思いますが…。

うーん。書いてて良くわからなくなりましたね。笑

三、現在結婚するのに適しているだろう世代の一員から言わせて頂くと、恋人(結婚対象になる)は、大学三年までにゲットしておくべきでしょう。

私の統計ですと(聞いた話ですが)大学でお付き合いしていた人と25?30歳で結婚している人が8割ほどだそうです。

なので、今のうちに男性と最低でも1人はお付き合いをし、男性経験を積むべきです。さすれば、良い男の条件も見えてくるでしょう。運命の出会いもあるかもしれません。笑(とりあえず今の現状としてですが、事実今後これ以上人口が減少すれば、運命の出会いもなくなってしまいますね。悲しいもんです)

四、人口的に作られた人間を、愛す事が出来るかどうか…

回答をためらったので、Cと答えさせて頂きました。

脳は理解しているものの、やはりそのように行動出来ないのが人間です。(少なくとも私にはためらいがあるかと)

人工的に生まれてきた子供はその後どうなっていくのか…

これも今後「人工的」に人間を産み出した後の課題になるでしょう。

Fさん(女性/35歳/既婚)

人工子宮装置は代理出産の様な感覚です。

私がもう一人子供が欲しかったですが、なかなか恵まれなかったため、人工子宮装置に対する抵抗が低いのかもしれません(つまり、その様な方法でも自分の遺伝子を持つ子供が欲しいのです。正常分娩と個体差がないとの前提ですし)。

Gさん(女性/35歳/既婚)

国内で少子化が解決できなければ、日本は中国の一部になる可能性があるのではないかと思います。

人口子宮装置は技術的に大変魅力的と思いますが、少子化の主要因は子供を持つ事のデメリット(キャリアの妨げ、教育費など)があると思うので、技術による出産部分を改善しても、育成が困難な限り少子化は解決されないのではないでしょうか。

Iさん(男性/35歳/既婚)

自分は2年間の不妊治療を経て子供を授かったものです。

技術による子供の誕生の選択肢を用意することについてはなんら否定の必要はないと思いますが、自然誕生に比較してコストが上がることは否定できないと思います(私達は治療に数百万費やしています・お金以上に治療のための時間的コスト、治療の苦痛なども相当なコストです)

また、技術により子供を誕生の苦労なく手に入れた場合、その価値を認識することができず、ぞんざいに扱う者達が増えることの懸念があると考えます。(すべての人たちがぞんざいに扱うわけではないでしょうが、どんなものであれ、高いコスト(苦労)を払って得たものに対しては大事にするための心理バイアスが働く傾向にあると考えます)

そもそも少子化の解決策について、日本人という種を残したいのであれば日本人の遺伝子をもつ卵子や精子などを活用するのは有効であると考えますが日本人という種にこだわらないのであれば、出生率の十分高い発展途上国からの人の受け入れの方が即効性が高いと考えます(その場合、主に政治が主役で技術の出番はあまりないでしょうが・・・)

少子化にも幾つもの要因があると思いますが、医療技術の発達により生物的に、死ににくくなっている事も少子化の一因を担っていると思います。

自然界としても死にやすい種は大量に子供を生むのが普通ですし。

良いとか悪いとかは別です(自分も親には長生きしてもらいたいが単なる要因分析としてはそこを抑えて考えています)自分の考えとしては人が持てる時間やコスト(時間・資金)は有限である→昔に比べて親(高齢者)にかけるコストが増える→未だ発生していないコストを下げる→子供を産む数を下げるのスパイラルなのではないかと思っています。

なので、仮に乳幼児までの育成を行う装置を作ったところで、生まれた後の世話をするためのコストが準備できないと”生まれただけ”で終わってしまう気がします。

むしろ、「高齢者への世話にかけるコストを一切きにしなくて良くなる装置」が誕生すれば子供だけにコストを振り分ける事ができるようになって、出生率が上がる可能性もあるのではないでしょうか私も人の親として、子供には幸せになってもらいたいですが日本にはあまり固執していません。

世界の何処かで幸せになってもらえれば十分です。いまはまだ生まれて間もないので、『英語に愛された』子である(笑)ことを祈っています。

Jさん(男性/35歳/既婚)

人口減少という問題については、結婚観や倫理観、宗教観など複雑な問題が絡むので、単純に技術論だけで割り切れるかというと難しいところがあるのかなとも思います。

ただ、そうは言っても、このままでは日本という国が滅びてしまうのもまた確かなわけで、座してそれを待つのが果たして正しい選択なのか?とも思います。

一方で、今の日本は人口の一極集中化を招いた結果、子育てをするにもあまり優しくない環境が都市部を中心にあるのもまた確かだと思います。

財力、住空間がアレば子供をもう一人ぐらい持ちたい、という人が私の周りには結構多いもので、上記のよう思いました。

Kさん(男性/35歳/既婚)

医療職に従事しております。

人の自然な欲望や倫理観から派生した感情でも過剰に優先させすぎると莫大なコスト(金銭および労力)がかかることを実感しております。

具体的には,年功序列制度や日本の高齢者に対する福祉(医療,年金,介護)のことが 私の念頭にあります。

出産の技術的な補助でも(上記のアンケート1.2のように),とても低コストな技術が確立できるかコストの負担が個人にある程度フィードバックがかかるような形で行われるのであれば賛成ですが政策として行われるようであれば,個人としては反対です。

(淘汰がゆがむため)どの社会的グループやどの年齢層の個人に対しても集団全体にかかる淘汰圧を適切に個々に分散してかける必要があり,そうでない社会は長期的には維持できないと思います。

そして今の日本は,若手に過剰に淘汰圧が集中していると感じています。(私の職業的にはほぼ真逆のことを行っておりますが...)

日本の少子化も,過剰な高齢者福祉を修正し若年者に適切な社会のインフラ資源を割くようにすれば自動的に改善するのではないかと思っています。

Mさん(男性/45歳/既婚)

何となくですが以下の数点が気になっております。

・日本という国は存在しているのだろうか

・結婚という概念が変化しているんじゃないのだろうか

・そうやって出来た子供の気持ちはどこまで考慮されているんだろうか

Nさん(男性/45歳/既婚)

技術的には、『産みたい』、あるいは子供を『育てたい』と思う『家族』に対して、 生殖医療の一方策として導入するのであれば、ありだと思います。

しかしながら、技術で対応することは、『戦略の失敗を戦術でカバーする』ことにしかならないと、個人的には思っております。(すみません、やはりコラムの趣旨と違うかもしれません。)

ですので、技術的に成功したとしても長期的には失敗する可能性(結局誰も使わない)もあるのではないのでしょうか。(高額になりそうなので。)

そもそも日本の人口が増えないのは、結婚して子供を産み育てることに、以前のようなメリットが減少し、 デメリットのみが増大した結果なのだと、個人的には思っております。

1 今はなきメリットについて

以前は、子供を育てる負担(経済的、時間的負担等)よりも、育て上げることにより、 おじいちゃん、おばあちゃんになった時に面倒を見てもらえることが、社会通念上期待できたため、 子供を育てることの方が手段として優位であった。

2 今現在のデメリットについて

結婚し、子供を育てることは、個人としての可処分所得を極端に減少させると思います。 従って、子供を育てるということの精神的充足よりも、経済的充足(あるいは経済的負荷)の方を 優先する人が増えたため、結婚しない、あるいは結婚しても子供を作らない人が増えた。 (お金が無くて結婚できない、子供が産めない、というのもこの範疇だと思います。)

3 結婚して子供を育てる必要性がない、ということが成立する世の中になった

社会保障制度で、働けなくなったとしても生きられるから。

ですので、技術からは離れてしまいますが、以下のような解決策はいかがでしょうか。

1 結婚しない人に対する経済的負荷を、結婚して子供を育てている人と同一とする。(おそらく、税金でしょうか。)世の中のお父さんのお小遣い、独身者より確実に少ないです。

2 結婚しても子供ができない家庭に対して、不妊治療の実施の有無、あるいは回数により、将来の経済的負荷を差別化する。(結婚しても、意図的に子供を作らない場合の対処として。)その際の一技術として、江端様の案も使用する。

女性は子供を生む機械ではない。 そのとおりだと思います。それは各人の自由意志に任せるべきだと思います。

ですので、選択肢として子供を育てるか、育てないが経済的負荷を負うか、を選べるようにすればいいのではないのでしょうか。

子供を育てない場合、他の人が経済的負荷を負って育てた子供に、将来社会保障を負担してもらうのですから。

日本の少子化対策の現状を鑑みるに、あまりに対処療法的なので、子育てに対する経済的負荷からの評価と少子化対策と言う観点も必要なのではないか、と思い『ご自由にどうぞ』と言う言葉に甘えさせて頂き、記載致しました。

現状の各種対策を見る限りにおいては、自分自身の利益のみを考えた場合、独身がベスト、ついで結婚して子供なしと言う答えが出かねないと思います。

そして、シミュレーションでご提示頂いたように日本は無くなる、と思いましたので、駄文ではございますが、思わず書いてしまいました。"


謝辞

今回の「『結婚を計算する』シリーズ」におきましては、当初、単に「結婚」を数値で計算してみる ―― ということが、目的だったのですが、

気がついてみると、生命倫理、生殖医療の技術、生命誕生と消滅のメカニズムなどにも手を出してしまっており、収拾の目処の立たないシリーズとなってしまいました(たぶん、英語のコラムを除けば、最長シリーズとなるでしょう)。

特にDNAに組み込まれている「死のプログラム」の話は、私にとっては大いなる衝撃でした(2014年1月24日現在で、未公開)。

それと同時に、私たちが「生きること」と同程度に、私たちが「死ぬこと」には、大いなる意味があることが、宗教でもなく、哲学でもなく、「技術として」理解し得たことは、私にとっては大いに意義のあることでした。

「死」という人類最大級の恐怖に対して、

―― まあ、そういうことなら、しゃーないなー

と諦めることができました。

なにやら、力が抜けて、気持ちが楽になったような気がします。

私たちは、「神さま」や「他人の考え」に因らずとも、自分なりの勉強や方法で、自分自身を救済できる・・・、のかもしれません。

皆様から頂いたコメントを読んでみると、どのご意見にも賛同できると同時に、どのご意見も否定できる ―― 私が今回のコラムで自分の提案を、自分で否定できたように ――

完全な答はない。

私たちは、不完全な答であっても、「何も選ばない」という選択肢も含めて、その中から何かを選んでいかなければならないのでしょう。

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私は今、「破壊衝動」にかられていまして、「少子化対策を放り捨てた未来」を見てみたいという思いがあります。

私の試算では、あと30年で、日本の人口は1億人を割ります。

「日本の人口が一億人を割るまでは、死ねん」という、狂った執念で、老後を生きるというのは、それはそれで、私らしいような気がします。

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では、最後に。

この度は、アンケートに応じて頂きそして、大変有意義なデータを頂いた上に、興味深いコメントを頂き、誠にありがとうございました。

再度別のテーマでご意見をお願いすることがあると思いますが、これに凝りず、ご協力頂けましたら、幸甚と存じます。

また、言うまでもありませんが、頂いたコメントの、追加、削除、変更は、無条件かつ即時に応じますので、御遠慮なくご連絡下さい。

2014年1月24日 江端智一


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