技術コラム「初音ミクと著作権(仮称)」に対する批判コメント


本ページは、本コラムの著者である江端智一が、当該コラムについて頂いた批判コメントを、可能な限りAS ISで転載させて頂くものです。

特段の記載がない限り、江端智一は本ページの批判コメントを、理解し、認定しているものとします。

本ページの目的は以下の通りです。

理由は以下の通りです。 私(江端智一)は、可能な限り、最大の努力と善意で、正しくウソのない著作の作成を目指しておりますが、そのような瑕疵なきを保証し得ません。

技術分野の誤った知識の流布は、皆さんの不測の不利益となります。

一方、それを恐れるあまり、「何もしない」というのは、私の思いに反します。

そこで、これらの、利益・不利益の調和点として、「原文そのまま」「批判コメント全開示」という方法を案出致しました。

当面、この方法による運用を続けさせて頂きたいと思っております。

何卒、ご理解、ご協力を頂けますよう、よろしくお願い致します。



なお、今回の私の一連の記事に対してツイートされた、「ほんの一部」の読者の方へ申し上げたいこと(「3.16メッセージ」)があります。

私の人格と著作の品位を踏みにじる最低最悪の罵詈雑言のメッセージを投げつけてきた「あなた」に伺いたい

また、全ての読者の皆さまに、お願いしたいこと(「4.13メッセージ」)があります。

江端が作り出してしまった「誤った情報」の流布を止めて頂けますよう、ご協力の程、よろしくお願い致します。


なお、今、私の部屋の中には、以下の書籍があります。これらを引用してご指摘頂く場合は場合は、ページ数を指定下さい。直ぐにお返事ができます。 その他、知的財産権法に関する基本書は、大体持っていると思いますが、ジュリストの「著作権判例百選」はまだ購入していません。必要ならば購入します。

同人誌関連では以下を読んでいます。


それともう一つ。

今回、私は同人誌について、著作権法第21条(×28条)に基づく侵害の可能性で論旨を展開していますが、「ポケモン同人誌事件」でも、第28条ではなく、第21条で立件していたようです。


2013年3月11日(月) 江端智一


自己紹介

はじめまして。突然のメール失礼いたします。 私はM県在住のSと申します。

一昨年まで大学で法律を勉強しておりまして、特に著作権法に興味を持っています。 趣味でもイラストを制作しています。

本コメントの背景ついて

このたびネットサーフィンをしていて江端さまのコラムの『“違法な”同人誌はなぜ放置されている? 600億円市場に突然警察介入の可能性も…』を拝見いたしました。

連載ものということで、途中でコメントをするのはいかがなものかとも思いましたが一区切りの文章として、意見を述べさせていただこうと思い筆を執った次第です。

キャンディ・キャンディ事件の見解について

前半部分のキャンディ・キャンディ事件に対するお考えは私も全面的に同意するところです。

>・逆に言えば、キャンディキャンディ以外のコンテンツではビジネスが成立しないのであれば、キャンディキャンディの世界観こそが「最大の売り」になっているという事実を、逆説的に証明してしまっている、と思えます。

>・このように考えていくと、「『カット絵』はマンガ家だけに著作権がある」という考え方を採るのは、仮に著作権法第28条のことを全部忘れてみたとしても、やっぱり難しいように思えます。

キャンディというキャラクターのカットである以上、そのイラストに現れている創作性は原作ストーリーから切り離すことは出来ないということですね。

同人誌の見解について

次に後半部分についてです。

>ここで提示する問題提起は、「同人誌は、本当に二次的著作物なのか?」ということです。

>同人誌をつくられている方は、当然、原作のアニメやマンガの雰囲気や世界観を反映させながらも、

>「独自のストーリー」をつくっているはずです。これを、原作品を変形させたり脚色させたりした二次的著作物であると主張するのは、ちょっと無理があるように思います。

これはつまり「作品の世界観やキャラクターのデザインを拝借しつつもオリジナルのストーリーを描いている同人誌」を想定していますよね。

>では、同人誌をつくっている人は、何をしていることになるか?

>アニメやマンガの原作の絵を「切り取って」「貼りつけて」いる、すなわち、原作を「コピー&ペースト(コピペ)」して同人誌をつくっている、と解釈されます。

>するとどうなるか? 二次的著作物の認定などという面倒なことはふっとばして、ダイレクトに複製権侵害(第21条)が成立してしまいます。

>つまり「同人誌=二次的著作物」ではなく、「同人誌=違法コピー物」で、アウトです。直撃です。

私はこの解釈には疑問を感じます。なぜならば原作品のイラストをトレースしているならまだしも、まっさらなところからアタリを取って表情を書き込んでいくのを複製行為だとは思わないからです。むしろ著作権法が保護するべき創作行為です。

するとその場合キャラクターは著作物ではありませんから、やはり単なるアイディアの拝借であり、同人作家の表現部分の割合が大きく差し止めを受ける可能性は下がるべきだと考えます。

原作者が不快に思う可能性が高いであろう成人向けの漫画ほど「シロ」の可能性が高いという主張はバランスがとれていないと思います。

現在の著作権法の構造上、原作から内容がかけ離れているほどその作品が訴えられる可能性が低くなるというのは当然の帰結ですが、同人誌の制作や購入を行っている人間から言わせていただくと、そんな原作置いてけぼりの同人誌は読みたくありません。

事実、人気ジャンルを梯子してはどこかで見たことがあるようなパロディネタ本を乱発している作家が儲けている現状に嫌悪感を持っています。話が逸れました。

私の意見の結論としては

■同人誌を作ることが複製権侵害の成立に当たる可能性が高いというご指摘はごもっともである

■しかしそれでもなお同人作家によるイラスト・漫画はまさに著作権法が保護するべき利益があるのではないか

■訴えられたくなければ原作からかけ離れた同人誌を作ればいいとの江端様の主張は多くの読者に混乱を与えるのではないかということです。

お忙しい中ここまで読んでいただいてありがとうございました。もしよければこれらの指摘に対する江端様のお考えをお聞きしたいと存じます。

失礼いたします。


ご挨拶

S様

江端です。ご意見拝承致しました。

大変示唆に富む内容をありがとうございます。

お返事に際しての前提条件について

先ず、お返事をさせて頂くに際して、私の意見のブレがないように、前提を付させて頂きたいと思います。

■原則として法律論としてお話をさせて頂くこと。

これは、実際の裁判においては、事件発生当時の状況、背景などが加味されて判決がされるのが当然であり、そして時として、法律そのものが間違っているという判断すらもされえますが、これは今回は考慮外とします。話を一定範囲に収束する為です。

■ここでいう法律論とは、法律と、確定した判決の中でも特に最高最裁確定判決(最判)に限定するということ。

これも上記と同趣旨です。

本コラムの背景について

では次に、このコラムの背景を説明させて頂きます。

■そもそも、著作権や判例についての解説を行う予定はなかった。

正直に申し上げて、今回および前回のコラムは私にとっては、あまり本質ではなく、28条、27条、21条の解説を、事例で説明できればよかったのです。

そこで同人誌の話を出したのは、単に事例として説明がしやすかったからです。

しかし、これが、編集で付与された題名が一因となって、このような騒ぎになっているのはご存知の通りです。

■しかし、上記の解説においても「条文」と「最判」を厳格に適用することには留意した。

可能な限り主観は排することとしました。そのように読めないとは思うのですが、一応法律の話として通るようにはしたつもりです。

さて、では、本論に入ります。

本コラムの前半について

まず前半については、論点はないものと致します。

後半から行きます。

同人誌の著作権法21条による複製権侵害について

>私はこの解釈には疑問を感じます。

>なぜならば原作品のイラストをトレースしているならまだしも、まっさらな

>ところからアタリを取って表情を書き込んでいくのを複製行為だとは思わな

>いからです。むしろ著作権法が保護するべき創作行為です。

まず、「ポケモン同人誌事件」において、「同人誌=二次的著作物」ではなく、「同人誌=違法コピー物」で、アウトとなった「事実」があります。

この事件の被疑者は、略式裁判で、罰金10万円の有罪となりました。

この「略式裁判」というのが説明が面倒なのですが、簡単にいうと、「警察で説教して家に帰したいけど、それだと『無罪』となってしまってマズいなぁ。取り敢えず、被疑者が同意するのであれば、簡単な形式的な裁判でチャッチャとすまそう」というものです。

刑事訴訟法461条〜470条規定されていますが,簡単にいえば50万円以下の罰金又は科料に該当する事件で,被疑者が同意した場合にこの手続を取りうることになります。

この事件は、略式裁判でなければ、同人誌の世界の法律的な解釈は変っていたかもしれません。被疑者が徹底的に闘えば(できれば最高裁まで)、同人誌に関する法解釈の新たなパラダイムがあったかもしれません(が、これはどうしようもありません)。

この事件の問題は事件そもののではなく、被疑者が有罪を認めて、(問題はここです→)「確定判決と同一の効力を生じる(刑事訴訟法470条)」ことになってしまったことです。

つまり、「著作権法21条違反を認めてしまった」ということになります。

勿論、確定した判決は当事者間(被告と原告)しか拘束しませんが、前例の判例として残ります。つまり「他人の著作に依拠した著作物が、複製権違反(21条)である」という一つの「判例」が、ここに「確定」した訳です。

>ところからアタリを取って表情を書き込んでいくのを複製行為だとは思わな

>いからです。むしろ著作権法が保護するべき創作行為です。

という解釈は勿論、それなりに尊重しうる考え方で、文化の発展を目指すことを目的(著作権法第1条)に照らしても、正当性を主張できるのではないかと思います。

しかし、それを主張するのであれば、我々は、ポケモン事件の確定判決に対する再審請求を行って、被疑者の無罪を勝ちとるというプロセスまで立ち戻らなければならないと思います。

「かわいそう」とか「酷にすぎる」という意見は、裁判所では考慮される事項ではありますが、法の枠組みを変えるものではないことは、ご存知の通りです。

(「略式裁判」の話がここまで長くなってしまったので戻します)

そこで、逆にお尋ねしたいのですが、

>ところからアタリを取って表情を書き込んでいくのを複製行為だとは思わな

>いからです。むしろ著作権法が保護するべき創作行為です。

を、どのように法律的に展開できると思われますか。

私には、その論理構築が、どのようにしても「できなかった」のです。

「著作権法28条→21条→薄い本で逃げる」はフィクションストーリー

>するとその場合キャラクターは著作物ではありませんから、やはり単なるア

> イディアの拝借であり、同人作家の表現部分の割合が大きく差し止めを受け

> る可能性は下がるべきだと考えます。

>原作者が不快に思う可能性が高いであろう成人向けの漫画ほど「シロ」の可

> 能性が高いという主張はバランスがとれていないと思います。

私の案出した「薄い本ほど安全になる」というのは「狂気の論理付け」です。

なにより私が、このような主張を信じていませんし、私は、「28条、27条、21条を、笑って(嗤って)理解して貰おう」という趣旨で創作した一つのフィクションストーリーです。

正直、ここに反応する人が世の中にいるとは思わず、これは私の判断ミスを責められても仕方ありません。

ただ、この話は「狂気の論理付け」ではありますが、その法律論的な論理付けには、瑕疵がないと信じています。

正直、私のこの「28条→21条→薄い本で逃げる」の論旨を、徹底的に破壊して貰えるような論理構築を、餓えるように求めていたのですが、誰も応じてくれませんでした。

同人誌を保護する法律体系をとことんつきつめると、このような逆説的な話になる、というこのアイロニーに、私の著作の価値があると考えております(自画自賛ですが)。

勿論、この話は、東京都条例に対する間接的な批判も含めているのですが、ここに言及してきた人は今のところ一人もいません。これも悲しいことでした。

頂いたコメントに対する江端の総括

さて、頂いた結論に対する当方からのコメントで、総括させて頂くことと致します。

■同人誌を作ることが複製権侵害の成立に当たる可能性が高いというご指摘はごもっともである

→ 拝承致しました。

■しかしそれでもなお同人作家によるイラスト・漫画はまさに著作権法が保護するべき利益があるのではないか

→ 拝聴に値します。「保護すべき利益」は多分あるのではないかと思います。少くとも私は、同人作家各位を積極的に保護する動機がありませんが、同人作家各位を積極的に保護することによって、間接的に、私がコラムを創作する自由をも保護しうる可能性があるからです(つまり自分の為にです)。

ただ、創作者、著作者の保護との適切なバランスのある保護が、現在の同人作家の創作物に見い出せるか、は、同人作家各位が、血反吐を吐きながらでも、定量的かつ客観的に示して頂く必要はあるかと思います(つまり同人誌の創作者自分の為にです)。

■訴えられたくなければ原作からかけ離れた同人誌を作ればいいとの江端様の主張は多くの読者に混乱を与えるのではないか

→ 混乱は与えていないと信じます。

「訴えられたくなければ原作からかけ離れた同人誌を作ればいい」というのことは疑いのない事実です。

もっと率直に言えば「訴えられたくなければ、同人誌を作らない」が絶対的な正解です。

そのような巨大なリスクを知らずに、安易に同人誌を作ることは、私から見れば、いつ「前科者」の履歴がつくかもしれない巨大なリスクです。

私には到底信じられないくらい恐しい所業です。

本連載が目指すところ

私は「そういう世の中にはしたくない」のです。

原作著作者と二次創作著作者が、現行法の範囲内で、共に利益を得て幸せになる道があれば良いと思いませんか。

私がこれまでの連載で、「他人の著作に依拠した同人誌が違法である」ときめつけてきたのは、全てが、次回の連載の為の巨大な伏線なのです。


ご挨拶

江端様

Sです。お早いお返事をありがとうございました。

前提とさせて頂く事項

最初に私も少しお断りをさせていただきます。

現行の法律論としてのお話、ということですが或いは私の話はその範囲を逸脱することがあるかもしれません。

というのもご存知のとおり同人誌をめぐる訴訟は依然として判例が少なく、行為と結果を条文から推論するしかない部分が大きいからです。

更に付け足すとすれば私は自由主義者です。そして法律の条文は平均的な国民が読んでどういった行為が違法なのかを理解できるよう記述するべきという いわゆる「明確性の原則」の考えを根底に持っています。

果たして江端様が納得いただける形で「28条→21条→薄い本で逃げる」論旨を論破できるかはわかりませんが、やってみます。

「薄い本で逃げる」理論の論破の試み

まず「薄い本で逃げる」理論ですが、先に申し上げたとおり成人向け表現はむしろ同人誌の中でもクロの可能性が高いといわれているものです。

これは著作権法だけでなく都条例やポルノ規制法との兼ね合いもありますね。

問題のポケモン同人誌事件も、成人向けの本が未成年者の保護者に見つかったことが発端といわれています。

また「ときめきメモリアルアダルトビデオ事件」も影響が強いところで、これは複製権、翻案権、同一性保持権の侵害が認定されました。

したがって原作にはない成人向けの描写ばかりであっても複製権の侵害は認められる余地があり、更に著作者人格権の侵害のリスクを増やすため適当でないと考えます。

(もっともこれは東京地裁判決であり江端様の前提と離れてしまいます。個人的にはこの判決には疑問も多いですが割愛します。)

次に21条についてです。

ポケモン同人誌事件は実は大学を卒業してから知ったので丁寧な解説をありがとうございました。

ネット検索くらいでしか知りえる情報がないので偏っているかもしれませんが、 やはり任天堂社が告訴に踏み切ったのは不思議というか、やりすぎではないのかという気持ちが強いです。

しかし企業の経営としてあくまでも法令にのっとった権利を行使したまでのことなのでしょう。

蛇足ですがポケモン同人界隈は私も現在少し関わりがありまして、他のジャンルと比べて作家側も買い手側も権利関係について敏感な気がします。

ともあれ本件略式裁判にて法21条違反で立件・有罪確定したことは揺らがない事実です。

ここで頂いた質問について言及させていただきます。

>そこで、逆にお尋ねしたいのですが、

>>ところからアタリを取って表情を書き込んでいくのを複製行為だとは思わな

>>いからです。むしろ著作権法が保護するべき創作行為です。

>を、どのように法律的に展開できると思われますか。

>私には、その論理構築が、どのようにしても「できなかった」のです。

「複製」とは「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること(法2@十五)」ですから、原著作物のコピー(海賊版)、トレースもしくは文字通り切り貼りしたもの等が該当するはずです。

有形的に「再製する」とは、「実質的に同一であればよく、原作品に創作性付加がなされてなければ再製となる」(中山信弘『著作権法』(有斐閣、2007)211頁)といわれており、

創作性が付加されていれば、複製でなく翻案となり、その作品は二次的著作物になる(同書同頁)と理解されています。

また、そもそも「著作物」とは「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、または音楽の範囲に属するものをいう(法2@一)」ので、たとえ既存のキャラクターであっても原著作物とは違った創作性を感得できる小説、イラスト、漫画であれば、それは著作物の要件に該当するのではないでしょうか。

以上のような考え方なのですが、いかがでしょうか。

個人的には本件略式裁判においては適用する条文が間違っており、27条翻案権の侵害ではないかと考えます。

補足をすると、先に挙げたときメモアダルト事件ではヒロインの絵柄を模したキャラクターを描画したことについて複製権侵害が認められましたが、どの程度絵柄が似通っていたのかは実物を見たことがないので判断が出来ません。

ポケモン同人誌事件も同様です。

しかしたとえ「絵柄」を似せたとしても、具体的な「表現」のレベルで真似をしなければ複製権の侵害にはなりません。

例えばクリスチャン・ラッセン風の題材で似たような色使い・タッチの絵を描いたとしても具体的にラッセンの特定の作品をトレースしていなければ

複製権の侵害を認定するべきではないでしょう。それはアイディアのレベルでの話です。

もちろんこれは最初にお断りした通り私の推論の域を出ません。しかし法学の分野ではけして少数意見ではないと思っています。

またドラえもんやピカチュウなどデフォルメされたマスコットキャラクターと人間の姿のキャラクターとでは絵柄を似せる度合いにも表現の幅に違いがあることも考慮に値すると考えます。

こうしていくと28条に行き着く前に27条が立ちふさがるわけですが、これがなかなか苦慮するところです。

既存の作品に脚色や変形を施すことが「翻案」であるわけですが、やはり「キャラクターは著作物ではない」ので、「特定の原作品のストーリーを完全に、あるいは一部を踏襲している」場合にはこの翻案にあたることになりますが、「原作を知らなくても成立する外伝的なオリジナルストーリー」の場合はこれにあたらないことになり二次的著作物にも当たらないという帰結が導けるというのが私の考えです。

しかし以前のメールで申し上げたとおり原作置いてけぼりの同人誌はあまり好ましいものではないのです。

しかもストーリーの内容が原作とどの程度関連しているのかというのは作品ごとに多様でありここで差を設けることに実益はないように思われます。

俗に「同人誌は著作権的にグレーである」といわれる理由はここにあると考えています。

実際問題、読み手としてはストーリーというよりはキャラクター像が原作に沿っているかどうかというのが重要な問題であることが多いので、これはもはや観念の世界であり法律で規定することが難しいと思います。

すると「書き手に愛があるのか」というような感情論に引っ張られがちになってしまうのです。

これ以上私の考えを展開すると現行法の範囲ではすまなくなるので、このあたりで切り上げようと思います。

最後に

以下、帰結へのコメントです。

>ただ、創作者、著作者の保護との適切なバランスのある保護が、現在の同人作家の創作物に見い出せるか、は、同人作家各位が、血反吐を吐きながらでも、

>定量的かつ客観的に示して頂く必要はあるかと思います

過去から現在に至るまで、精力的に同人文化を守ろうとしている書き手さんやコミックマーケット準備会のスタッフさんはたくさんいます。

ここで守ろうとしているものはまさしく「表現の自由」です。素晴らしい作品に出会ったとき、人はその感動を誰かに伝えたくなるものです。

そのために感想文を書く人もいれば、場面の再現を行う人もいるし、続きを想像する人もいるのです。単にファン同士の交流でも十分でしょう。

それを不当な理由で禁止することは、たとえ私人であっても権利の濫用であると考えます。

誠に失礼ですが江端様の同人に対する立場についてそれほど承知しておりませんので少し不思議に感じます。

>そのような巨大なリスクを知らずに、安易に同人誌を作ることは、

>私から見れば、いつ「前科者」の履歴がつくかもしれない、巨大なリスクです。私には到底信じられないくらい恐しい所業です。

そうですね、通常であればそうお感じになるかもしれません。でも二次創作について理解がある製作者サイドの方は結構いるのです。

実際に私が現在メインで活動しているジャンルはそういった歴史的経緯があります。先ほど話に出たK社でさえ、現在はなかなか寛容な態度なんですよ。

もちろん「だから訴えられるはずはない」なんて安穏な態度を取る気はありませんけれども。

>原作著作者と二次創作著作者が、現行法の範囲内で、共に利益を得て幸せになる道があれば良いと思いませんか。

>私がこれまでの連載で、「他人の著作に依拠した同人誌が違法である」ときめつけてきたのは、全てが、次回の連載の為の、巨大な伏線なのです。

もちろんそう思います。とはいえまずは連載の続きを読まないと江端様のお考えの全貌が見えないような気がします。

公開されるのを楽しみにしています。




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