江端さんのひとりごと 「アメリカで役に立つ私」 先週から、現在開発中のアプリケーションソフトウェアの、ストレステスト をやっています。 ストレステストとは、システムが悲鳴を上げそうなくらい過度な負荷をかけ て、アプリケーションソフトを徹底的に苛め抜くテストです。 このテストでシステムダウンしたら、その原因を探して、バグを潰す。 ソフトウェアの開発とは、職人芸にも似た、根気のいる仕事なのです。 それはさておき。 パフォーマンステストを自動化する為に、誰もいなくなった深夜のオフィス で、ひたすらスクリプトプログラムを書いていたところに、背後から聞こえる、 不自然な発音の呼びかけ。 「エバタサン」 ("バ"にアクセント) いつもなら、元気よく"Tom!"と呼ぶ、テクニカルマネージャの、リゼッタ (女性)が、今日はやけに謙虚に呼びかけています。 ちょっと助けてくれ、と言われて、彼女のキューブに行くと、そこには日本 語Windows2000のOSの画面が上がっていました。 『何が表示されているのか、わからないの』 そりゃ、そうだろう。 かなり無茶だと思うぞ。 我々がアラビア語のWindowsを扱うようなもんだ。 ウィンドウのダイアログのメッセージを、即席で英語に通訳している最中に、 彼女が「シャットダウン」のカタカナを書き写していたので、私が書き取るよ うに申し出ました。 『この文字をパターンマッチングして、調べるしかないと思うけど、随分、 大変だと思うよ』と言い、日本語表示で解らないことがあったら、いつでも私 のところに来なさい! と言い残して、彼女のキューブを去りました。 ----- 渡米して一年半にして、初めて私は 「アメリカで役に立つ私」 を実感することができました。