江端です。 今週始めから、姉の双子の娘達が、座間キャンプのドーリーの家にホームス テイしていました。 ドーリーは、私が座間キャンプで10人目くらいに見つけた、私の英語の教師 で、毎週一回程度、お宅に訪問して英会話の練習を受けています。 実際には自宅に泊まるのではなく、一日6〜8時間を過し、江端家に宿泊する という変則ホームステイではあったのですが、現在のところ、疑問形が使えな い、過去形を知らない、5W1Hを知らない、知っている単語の総計は数十程度と、 まあ、この程度の英会話力で、よく4日ももったもんだと感心しています。 一日目の夜に、ドーリー夫妻を誘って、姪っこと娘と嫁さんと私で小田急相 模原の餃子専門店に出かけました。 ドーリーは、発音の癖が強いと言われているジョージア州出身なのですが、 非常にクリアな(と言うか、日本人にヘルプフルな)英語を喋るので、私も比較 的楽に話をすることができました。 で、何を話していたかと言うと、 - Beauty and the Beast(美女と野獣)の、"Beauty"の方には、何故 "the"が付かないのか。Beast and the Beautyでは、何故だめなの か。 と、しょーもない話題で盛り上がっていました。 嫁さん:「よく、それだけベラベラと英語が詰まらずに出てくるよね」 江端 :「でも・・・、まあ、分かっているとは思うけどさ・・」 嫁さん:「ん。まあ、やたら会話に"the"が出てくるよね」 江端 :「この前、電話したときに、the Dollyとか言ってしまったしなぁ。結 局、内容や正確さが滅茶苦茶だろう」 嫁さん:「でも、あれだけ喋れれば凄いよ。」 江端 :「・・・・・・」 ----- 先日、3年前まで、IETFのポリシーワーキンググループのチェア(議長)だっ た、J.S 氏が日立を訪問され(と言うか、その経緯は実はよく知らんのだが)、 日立のシステム研のメンバ向けのプレゼンテーションをされるとのことで、後 輩のH嬢に参加ように誘われてたのですが、忙しいことを理由に断わっていま した。 しかし、当日、ホストならぬホステス役に任じられたH嬢より『ディナーは、 部の接待費から全額出ますよ』の一言に連られて、のこのこと付いていってし まいました。 約1時間のプレゼンテーションで、J.S 氏に質問を繰り返していたのは、こ の私。 彼の発表に非常に興味を持った訳・・・ではなく、ひたすら眠かったんです、 プレゼンテーション。 英語の講演なんぞは、真面目に聞けば聞くほど眠くなるもんですし、だいた い、私の専門外の話だったし。 しかし、ムードメーカのM氏が体調不良で壊滅状態、M女史が舟を漕ぎ始め、 部長の頭が『カクッ』と落ちた時、 こりゃ、あかん、なんとかせにゃ と。 3年前、通産省補正予算プロジェクトのポリシーベースネットワークの標準 化活動の一環として、インターネットドラフトを書かされた時に、氏のドラフ トやプレゼンテーションを、どれほどパクったことか。 個人的には、これほど大恩のある氏に対して、『日立S研全員全滅』でお返 ししては、我社は忘恩の輩の巣窟と評されても致しかたありません。 私が、敢えて"Stupid person"を演じてまで、ポイントの外れた質問を連発 していたのは、日立の名誉の為だったのです。 ----- 会食に出席したのは、部長と私とホステス役のH嬢のみ。 なんとなく、騙された感も否めませんでしたが、横浜の赤レンガ倉庫の中華 料理屋で、ここでも私は場を盛り上げる為に、奮闘しました。 - 日立では夢物語だが、米国では、家族同伴の海外出張が一般的と聞 くが本当か。 - 日本のUnion(組合)は、会社の経営陣を支援する組織であるが、こ れをどう思うか。 - これは日本のタブーであるが、我々は働いても働いても、全然報わ れている感じがしない。こういう感覚は米国にもあるか。 部長の前で、好き放題言いまくっていました。 これに対して、氏は、 - 米国の中東問題は一体何をしとるんだ。 - CISCO(氏はCISCOのFellow)は、ネットワーク管理を解っちゃいない。 あそこは、プロトコルにしか興味がないのだ。 と、米国と日本とシスコと日立の、内情暴露大会の様相を呈して来たところ で、お開きとなりました。 その後、H嬢とタクシーに乗りこんで、J.S 氏を川崎のホテルまで送りまし た。その社内の中でも、3人でベラベラとしゃべり続けておりました。 ----- H嬢:「江端さんの喋るスピードって凄いですよね。J.S 氏より速いで す。」 氏は、私達の為にゆっくりしゃべってくれていたことは間違いありませんが。 江端:「文法や発音や構成が滅茶苦茶だったろう?」 H嬢 :「でも、あれだけ喋れれば凄いですよ」 ----- 傷つくんです、私。 文法や発音や構成が滅茶苦茶で、勢いだけで喋っているのは、誰よりも私が よく知っています。 「文法や発音や構成が滅茶苦茶だったろう?」→「でも・・・」 これは紛れもなく、私の謙遜発言(文法や発音や構成が滅茶苦茶)に対する明 確な『肯定』です。 私の期待している答は、こういうものではありません。 例題を一つ。 もし貴女が、男性から、つきあって欲しいと言われて、「私なんて、不器用 で頭悪くて、美人じゃないし・・・」と言った時に、 「気にしないよ」 と言われて、貴女はその男とつきあえますか? 正解は 『そんなことないよ』 ですね。 もし私が英語に関する話題で、自分の英会話のことに関して、 「文法や発音や構成が滅茶苦茶」なる発言をした時は、必ず、 『そんなことありません。江端さんの英語は完璧です。私には到底真似でき ません。江端さんは本当に偉大な人です』 と答えるようにして下さい。 もう一度書きます。 『そんなことありません。江端さんの英語は完璧です。私には到底真似でき ません。江端さんは本当に偉大な人です』 ----- これ以外の回答をした場合は、不本意ながら潜在意識下で、私はあなたに対 して、仕事や他のことで、不要な妨害をしてしまうかもしれません。 お忘れにならないよう、くれぐれもお気をつけ下さい。