江端さんのひとりごと 「自己紹介文」 2004年11月12日 この度、主任クラスに昇級し、総務から「社内報に本人の紹介文を乗せるの で、何か書け」と命令されました。 『自分のことなら、自分で書くのが確実』と、部下のゴーストライターとなっ て、全文自分でざーーっと書いてしまいました。 # 恐らく前代未聞の試みだと思うけど。 この文章の初版と、脱稿版を公開します。 <初版> 電子レンジの食品自動判別アルゴリズムで「サンマとサバ」を2種類のセン サだけで判別するという偉大な発明をされて以来、エンジン制御から監視、産 業システムまで幅広い分野で活躍をされて来た。 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関するこだ わりは他の追従を許さない。 特に米国特許庁との闘いは熾烈を極め、審査官を交代させるまで闘い抜いて 特許査定を奪取した話は、今なお伝説として語り継がれている。 米国での2年の生活で、会話の1割の単語で残りの9割を推測し、相手の言っ ている内容を理解しないで会話を強行するという稀有な能力を獲得し凱旋帰国。 私生活においては、辛辣な切り口で語られるエッセイをWebサイト発表し続 け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている一方で、家庭においては、 美しい妻と可愛い二人の娘からこよなく愛される父親でもある −−−と書いて提出するように、江端さんから命じられました。 <脱稿版> 1991年(平成3年)入社。家電、自動車エンジン等の制御アルゴリズム、ネッ トワークシステムの研究開発等に従事。 2000年より2年間、米国コロラド州のヒューレッドパッカード社にてポリシー ベースネットワーク管理システム"PolicyExpert"の共同開発に参画、その製品 化に大きく貢献している。  また、意外な視点から繰り出される特許発明には定評があり、特許権に対す るこだわりは他の追従を許さない。  私生活においては、辛辣な切り口で語られるエッセイや自作ソフトウェアを Webサイトで公開し、多数のファンからカルト的な支持を集めている。 家庭においては、『美しい妻と可愛い二人の娘にこよなく愛される父親であ る』と常に主張している。 このように、「宝珠の自己紹介文」は、私の手を離れた後、部長と後僚との 10回程度のやりとりで、河川の下流の石コロのように、フツーの日立の文章に 成り果てたのでありました。 ----- ところで今回主任クラスに昇級した者達の自己紹介文の最後だけを全部羅列 してみますと・・・、 - 家庭では2女の父。共働きの為、家事と育児にも悪戦苦闘中・・・ - ファミレスでの愛娘とのデートを楽しみ・・・ - 息子さんと娘さんのよきパパで・・・ - 愛妻と二人の息子のパパで・・・ - 愛娘との休日に一緒に遊ぶことを何よりも楽しみに・・・ - 奥様の話になると目尻が下りっぱなし・・・ - 育児の愚痴をこぼすも、口元は緩みっぱなし・・・ - 愛娘のよきパパとして・・・ - 一男一女の良きパパ・・・ - 子煩悩な二児の良きパパ・・・ - 家事も良くこなす愛妻家・・・ - 愛息と過す時間をこよなく愛す良き父・・・ - 家庭を大切にするよきパパ・・・ うちの研究所の主任研究員には、他に特徴ないんかい! しかし、かくのごとく、この私もこれに従属するような内容を書いてしまっ て、今、本当に悔悟の念果てしなく、です。 こんなことなら、 - 3日に一度は、飯が不味いといって卓袱台をひっくり返し、 - 酔った勢いで、年端もいかない娘に手を上げ、 - 収入の殆どは、判明しているだけでも5人の愛人に渡す、 - 人間のクズの名に恥じないパパ。 くらいのことを書いてやればよかった。 (本文章は、全文を掲載し内容を一切変更せず著者を明記する限りにおいて、 転載して頂いて構いません)