その421  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 小田原のストレージ事業部(日立内通称(STR))に所属している先輩のN さんは、大体一月に一回(金曜日の夜が多い)の割合で、江端家に電話し て来る。 大抵、酔っ払っている。 りりりりりーん。 Nさん:「俺だ」 江端 :「俺じゃわからん」 Nさん:「○○○○(*1)だ」 江端 :「お前の提唱した技術は、ネットワークトラヒックのオーバー ヘッドが大きすぎて、広域では使えんわい」 一瞬の沈黙。 Nさん:「で、最近の様子はどうだ」 江端 :「特にぱっとしませんねえ。仕事がきつくて毎日辛いですよ」 Nさん:「帰りはいつもこんな時間か?」 江端 :「ええ。最近忙しいばっかりで、何だか力が出て来なく て・・・」 Nさん:「そうか、お前もか。俺も最近なんだか、自分の人生が『安い』 ようで虚しくてな」 江端 :「・・・」 Nさん:「毎日、食堂の380円の夕定食を食べて、夜11時までの残 業を続けていると、虚しいぞ」 江端 :「そうですね。Nさんくらいのキャリアになると、毎日の残業 代と比較して、確かに380円の夕定食は『安い』ですよね。 安すぎますよ」 Nさん:「・・・いや、俺が言っているのは、そういう『安い』と言う ことではなくてだな・・・」 (*1)まだ生きているだろうから、名前は伏せておくが、死ぬ程嫌いだった元上 司。勿論、今でも嫌いだ。