その414  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  私は、嫁さんに、毎日毎日、仕事や趣味のこと、嬉しいこと悲しいこと悩 み事など、なんでも全部話す。それは、どんな話もきちんと聞いて理解しよ うとする、嫁さんの性格に因るところが大きい。  ところが技術者でない嫁さんに、仕事の話をするにはそれ相応の難しさが ある。  例えば通信プロトコルの話などは、特に難しい。  私が当時困っていた問題とは、DeviceNetと言うモータやロボットなどの デバイス間で通信を行うプロトコルに関することであった。  一応、仕様書などを読んで正しい通信メッセージを作るようなプログラム をつくったつもりであるが、本当に通信できるのかはやってみないとなんと も言えない状況に合ったことである。 江端: 「つまり、この通信方式を使うモータさんやロボットさんは、全員      大阪弁を使いましょう、と言う取り決めが一応あるわけなんだけ      ど、もしかしたらあるモータさんは、東北弁しか理解できないか      もしれない訳だよ。」  嫁さん:「取り決めがあるなら、大丈夫じゃないの?」 江端 :「んーとね、仕様書と言うのが要するに『英文法概説』みたいな本      で、会話の実際例とか全く記述されていないわけ。テニスで言え      ばルールブックが、コートの真ん中にただでーんと置いてあっ      て、『さあ、試合を始めなさい』と言っているようなものなん      だ。」 嫁さん:「・・・。」 江端 :「僕はそのルールブックを読んで、対戦相手と試合を始めるわけな      んだけど、相手のルールブックの解釈が少しでも違ったら、全く      試合にならん。」 嫁さん:「全くだめなの?半分くらいは理解できるんじゃないの?」 江端: 「そこが、コンピュータの融通の悪いところなんだけど、コン      ピュータシステムにとって99.9999%は0%と同じだからね・・・。      つまり100%正しくなければ、ピクリとも動かないのがシステムと      いうやつで・・・」