AtermIW60で無線LANをやりたい!  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ver 0.1 1998/11/20 江端智一 E-mail:See http://www.kobore.net/mailAddress.gif http://www.kobore.net/  言うまでもありませんが、本文章は 無保証です。この文章の影響によりどの ような事が起ころうとも当方は一切の責任を持ちません。 1.動機 仕事で「無線映像監視システム」の実験を行う必要に迫られて、と言うのは 口実で、実は「家庭内無線LANをしたい!」と言う極めて個人的な興味もあっ て、無線LANを簡単に出来るような器材を色々調べていました。 それで、『PHSを使うが、一円も金のかからん「オフィスモード(要するに 内線)」を使う32K PIAFS通信が出来る!』と言うことがかかれていた "AtermIW60HS"の購入を決意しました。「内線PIAFS通信」ができると言うのは 大変なインパクトでした。 そんなこともあって、クライアント側で使うノートパソコン用にNTT Personal PHS 331TとパルディオデータカードDC-2S(2)を会社に買って貰うこ とになりました。  ところが、経費削減の折、「何?ISDN?そんなもん、契約できるか!」と言 う社内の声無き声の為、ISDN抜きで無線LANの構築をせねばならない事態となっ てしまいました。 終始気になっていたのは、ISDNのインターフェースをささないと "AtermIW60HS"がご機嫌を悪くして動かないのではないかと言うことでした。  『ISDNなんざどうでもいいから、無線LANを試したい』と言う要求は相当あ ると思うのですが。 2.システム構成 2.1 システムの目的 さて、私のやりたいことをシステム構成込みで纏めますと、次のとおりです。 「PIAFSのサーバとクライアントを作って、PHSのオフィスモードを使って内 線LANをやりたい!」 サーバ側  日立FLORA370(NT WorkStation 4.0) + Aterm IW60HS(COM1に接続) クライアント側 日立FLORAMA(Windows95)+ DC-2S(2)(データカード) + 331T(PHS) と言うとてもとても単純なものでした。 2.2 やり方はどこに書いてあるの!? が!これがAtermのマニュアルのどこにも書いていないんだなあ。 私は人生でこんなに真剣にマニュアルを読んだことがないというくらい 「Aterm設置・設定マニュアル」「Aterm操作マニュアル」「インターネット接 続ガイド」を丸一日かけて、ほぼ全ページにアンダーラインをひいて理解しよ うとしたのですが、本当に書いていないのですよ。  「Aterm操作マニュアル」のP54にちょっと書いてあったのですが(実はこれ がもの凄く重要な情報だった)、こんな説明でわかる奴がいたら尊敬したいぞ、 本当に。  私もあまり人のことは言えんけどね、もう少しマニュアルの書き方を研究し ましょう、NECさん。技術者の私でわからんと言うことは、技術者でない人は *絶対*にわからんと思うんですよ。 3.構築手順  では、以下にこの構築方法の手順を、『愚痴』をまじえて御説明いたします。 3.1 まずはともあれ、PHSの登録  PHSの通話を無料で使おうって言うんだから(たとえ100メートル程度で もね)、それなりの手続きはいります。この手続きは、"AtermIW60HS"を購入 した店で、"AtermIW60HS"本体とPHS(該当機種PHSは http://aterm.cplaza.ne.jp/topics/iw60_phs.htm参照)を持っていけばやっ てくれるはずです。  #でも、『販売店様用』の増設登録説明書が、本体の箱についていたと言う #ことは、購入した人が勝手にやってもいいよ、と言うことかな? PHSの番号は91,92,93,94,95,96のどれかになります(実際に扱うときは #*91.#*92 とか#/93とかになります。 「Aterm操作マニュアル」のP54を参照 の事)。 これらのPHSは「AtermIW60HSに透明な線(無線)で繋がった子機」と考える と理解しやすいでしょう。AtermIW60HSには、アナログのポートが2つあり、 その番号は1,2です。このアナログポートは、「AtermIW60HSに目で見える(有 線)で繋がった子機」と考えます。 で、これが一番大切なのですが、データポート(PCのCom1やCom2につなぐ ポート)は「81」です。繰り返します。「81」です。もう一度繰り返しま すが、「81」です。  だから、AtermIW60HSには、無線ポート番号91〜96,アナログポート1,2、そ してデータポート81の最大合計9つのポートがあることを理解して下さい。  ですから、(今になって冷静に考えれば)私のやりたかったことは、単に無 線ポート91とデータポート81をつなぐことだったのです。 3.2 サーバPCに「らくらくウイザード」と「らくらくユーティリティ」をイン ストールする #これは「インストール」が「らくらく」であって、設定は楽じゃないと思う。 #メニューも直感できじゃないし。ある程度は仕方ないかともおもうけど。 でインストールしたら、「らくらくユーティリティ」→「詳細設定」→「無 線ポート」で、使おうとしているPHSのポート(「91」→Aポート、「92」→B ポート・・・・)を選んで、ポート登録のところで「使用しないまたはデータ 専用」を選んで、登録ボタンを押します。  後は何もしなくても良いはずです(私の場合、なにかしたら動かなくなった。) 3.3 サーバPCにRASサーバを立てる  NTの「設定」→「コントロールパネル」→「ネットワーク」→「サービス」 で「リモートアクセスサービス」があるかどうかチェックして下さい。なけれ ばインストールしましょう。  #ここでインストールすると、他のNTのサービスが死ぬことがあります。  #この場合、サービスパック3を入れ直すとサービスが生き返ります。  #が、  #そうすると画面がVGAの野暮ったい画面設定に代わり、さらにそれを直すために  #ビデオドライバを入れ直す・・・・。  ## いや、まったくNTは素晴らしいOSですな。  ## 青い画面で落ちるようなことは「滅多」にないしねえええええええ!  リモートアクセスサービスの「プロパティ」→「構成」で「ダイヤルアウト と着信」を選んで下さい。 この選択後は、「らくらくウイザード」と「らくらくユーティリティ」は使 えなくなります(正常な動きです)。 #この選択後、他のNTのサービスが死ぬことがあります。 #(上の私の愚痴を参照) #このステップの作業は、ひたすら忍耐です。この段階でサーバは出来上がる #はずです。 4.クライアントPCを設定する まず、32Kパルディオ・データ/FAXカード DC-2S(2)をノートPCで使えるよ うにします。DC-2S(2)を差し込んで、ドライバ用のFDを放り込めば出来上が るはずです。DC-2S(2)のマニュアルを参照して下さい。 5.通信実験開始  DC-2S(2)にPHSをつなげて、まずはATコマンドで通信実験です。  95のハイパーターミナルからATコマンドを発行してチェックしようとしたの ですが、「はて、サーバPCの電話番号は何番かいな?」  恐らく100以上の組み合わせを試したと思いますが、結論から言えばサー バの(内線無線モードでの)電話番号は    #*81 です。  ところが、 ATD#*81  と入力しても、"ERROR"と言うだけで、一向に発呼しません。このほか ATD81,ATD*81,ATD81#,ATD・・・・と気の遠くなるような組み合わせをしたの ですが、全く駄目(この時、サーバは「81」ではないのか?と不安に襲われ、 やりかたをふらふらと代えて、さらに状態が悪くなってくる)  #サービスセンタは、2日間に渡って100回以上電話しても常に話中。  #『もう2度とNECのTAなんぞ買わんぞ!』と言う怨念ではらわたが煮え繰 #り返ってくる。  #NECのWebサイトをくまなく調べても設定情報なんぞ全然書いていない。  #なにより機能を実現するための手段が、マニュアルに何も書かれていない #ではないか!  #100万台売ったのなら、それ相応のサービス用の電話回線を用意せんか!  と思う私は、決して間違っていないと思うのです。  ----- しかし、私が偶然Webから入手した営業窓口の電話番号で対応して下さった、 やはりNECの坂上様が、この窮地を救って下さったのでありました。いや、あ の親切で的を得た対応には、まじめに涙がでそうでした。 大半を占めるサービスセンタのオペレータは、「良く分かっている奴は対応 が横柄。」「対応が親切な人は、全然内容を理解していない。」そして「全然 わかっていないくせに横柄」と言うのが普通なのですが、坂上様は全く逆の対 応で「実にAtermの事を良く分かっていて、システマティックに原因を追い込 む」だけではなく、分かったことを丁寧にわざわざ電話で報告までして頂きま した。 そして、『データカード(DC-2S(2))が怪しい』と言う推論と、『サブアド レス用のキャラクタを回避する手段があれば』と言うアドバイスで、私もピン! と来ました。  結論から言いますと、DC-2S(2)は、"#""*"をサブアドレスの区切りとして認 識し、「電話番号」としては認識しなくなるのです。 従って、DC-2S(2)のレジスタS103とS104をいじって"#""*"がぶつか らないように変更しなければなりません。 ハイパーターミナルから、  ATS103=1 (#→\に変更)  ATS104=1 (#→%に変更) としてから、 ATD#*81  をすると、念願の"CONNECT"が出てきました。私はこの時雄叫びを上げてし まいました。 この後、 AT&W で設定情報をDC-2S(2)に書き込んだのですが、ダイヤルアップからATD#*81 をしようとしても「サーバから拒否された」と言うメッセージが出るばかりで す(サーバが拒否するうんぬん以前に、PHSが発呼していないはずなのですが)。  そこで、ダイヤルアップネットワークのアイコンから「プロパティ」→「設 定」→「接続」→「詳細設定」として、「追加設定」の項目に  「ATS103=1S104=1」  と書き込み、強制的にレジスタを変更させるようにしました。こうしてよう やく、クライアントとサーバがIPでつながりました。  繋がったときは本当に嬉しかったのですが、もの凄い疲労感が体を襲ったの も事実です。 6.終わりに たくさんいっぱい書いてきましたが、結局の所「無線LANのニーズは高いと 思うから、ちゃんとやり方をマニュアルに書くか、Webに乗せた方がいいと思 うよ。」と言うことです。 それとISDNのインターフェースをささなくても"AtermIW60HS"の内線LAN機能 は動くと言うことも、結構重要な情報のような気がします。 色々NECの悪口を書いてきましたが、ひとたび動き出せば『Atermは素晴らし いTAだ』などと言うように簡単に前言を翻すのが技術者と言う奴であり、そし て私はそういう技術者です。 NECの技術者のみなさん、頑張って下さい。 特にマニュアルを書く人とサービスセンタの方はね。