New Year's Battle



next up previous
Next: やぶさかでないスキー Up: 江端さんのひとりごと'95 Previous: 江端さんのひとりごと'95

New Year's Battle

独身男性女性の皆さん。

本年のお正月は、御実家のお父様やお母様とどのようなバトルを繰りひろげられて来 ましたか? ええ、当然話題は『結婚』です。

子供がお正月に帰省してくる日を指折り数えながら、お父上もお母上も都会で働いて いる息子や娘達がどのように生きているのか、それはそれは気になってしょうがありま せん。仕事は大丈夫なのか?身体を壊していないのか?人間づきあいはうまくやってい るのだろうか?何か困った事はないのだろうか?

そして何より、『この子、付き合っている人いるのかしら?』『結婚する気があるの か?』が気になります。

最近は、結婚難の時代と聞きます。独身主義などと言う変な考えに染まっていないか 、気になるかも知れません。また、同性婚もどんどん市民権を得るような時代になって きていると聞きます。一方治療法のない不治の血液の病気が流行っているとも聞きます 。風俗産業は若年層までエスカレートの一途をたどるなど、錯綜する情報の波の中で御 両親の心配はどこまで行っても尽きる物ではありません。

一方、メーカや金融関連に勤めている息子や娘達は、リストラの厳しい昨今、明日は どこに飛ばされるか分からない不安の中で、厳しいノルマを課せられ、無理難題を言い つける上司に呪詛の言葉をを吐きながら、遅くまで仕事と激闘の毎日でした。両親の心 配している事など、目の前の立ちはだかる困難に比べれば、芥に等しい取るに足らぬ物 です。

せっかくの休みに実家に帰って来て、『結婚』だの『AIDS』の心配をされるほど、む なしいこともありません。『第一、私の結婚をあんた達が心配してもしかたなかろうが !!』と思うのですが、この両親の結婚信奉主義が、もはや理論を越え限りなく神に近 い領域に至っている事はなど、息子や娘達はすでに10年を越えるバトルで熟知してい ます。

息子や娘達は何も口答えをせず、『不戦敗』を決め込み、台風が通り過ぎるのをひた すら待つしかありません。

--------------

帰省した当日は家族揚げての大歓迎で、なかなか話題に登って来ませんが、2日目く らいの夕食の終わった後くらいになると、父親がなんとなく言い難そうに切り出して来 ます。そのさりげない風が、いかにも三文役者と言った感じで、滑稽を通り越して悲し さを感じさせます。母親も、やっと父親が切り出してくれて、会話の突破口をつかみま した。

『お前、もういくつになる?』
そりゃ、あんたが一番知っているだろう!!と思いながらも、しぶしぶ答えます。
『あんたも、そんなになるんだねえ。』
と感慨深げに答える母。

もう、こうなってくると、これは父と母と息子/娘で演じるお芝居みたいなものです 。たいていは、息子/娘が怒って席を立っていく、か、父が先日取引先で見つけた若い 女子あるいは男子社員の話を諦めて聞くだけでしょう。

--------------

ところで、江端家のバトルは、これまでおおむね息子、つまり私が優勢でやってきま した。私は何の準備もせずに帰省するような、愚か者ではないのです。

【バトルその1】 親の自尊心をくすぐる作戦

 

父は昔、エリート中のエリートだった海軍仕官学校の学生で、大変『もてた』と言っ ている(ただし自己申告)ので、結構有効。

【バトルその2】 哲学的話題に引き込んでうやむやにする作戦

 

父は年に2度、正月と盆の息子との政治討論をとても楽しみにしているような気質な ので、なかなか使えます。

【バトルその3】 静かにごまかす作戦

 

これは、誰にも何も言わせない、最高の技でしょう。

【バトルその4】 今年使われた「背水の陣」作戦

 

こうして、今年私は『結婚』の話を10秒で封印しました。

名付けて「秒殺の話術」。

しかし、来年どうしよう・・・・。

--------------

さて、貴方のバトルはいかがでしたでしょうか? 

今年も色々なひとりごとを一方的に送らせて頂きたいと思います。

今年は貴方の話もたくさん聞かせてくださいね。

では! 新年、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

1995年1月
江端 智一


Tomoichi Ebata
Sun Feb 4 19:07:50 JST 1996