「今の合州国は『ID無し』で飛行機に乗せてくれる程甘くはありません」 02/16/2002 2001年9月11日の、世界貿易センタービル及び一連の施設に対するテロ攻撃 以来、アメリカ合州国のセキュリティチェックの厳しさは、想像を遥かに越え るものがあります。 この度、フォートコリンズ在住の日本人の方から、以下のレポートを頂戴致 しました。非常に得難い体験レポートで、恐らく入手が非常に困難な情報の一 つであると思います。 公開をお願いしたところ、心よく了承して頂きましたので、ここに掲載させ て頂くこととします。 なお、このレポート執筆者の、捜索、調査、邪推等を、厳しく禁じます。 ------------------------------------------------------------ 皆様、製品リリース直前の忙しい最中、大変御迷惑をかけ、お騒がせ致しま した。 今回皆様の助力にて、無事、フォートコリンズに帰ってくることができまし た。ここに、今回の事件の経緯報告をさせて頂くことで、お詫びと御礼の気持 とさせて頂きたいと思います。 1. 第1の事件発生の経緯 1月20日(日) 午後3時10分ごろ フロリダ ディズニーワールド アニマルキングダム内の女性トイレ内 にて、妻が財布の入ったリュックを置き忘れる。 1月20日(日) 午後3時20分ごろ 置き忘れに気がつき、トイレに戻るが、財布だけ抜き取られたリュッ クのみが残る。 財布の中身は、クレジットカード、運転免許証、保険カード、現金 200ドル程度、その他ショッピングカードなど。 数分後、私が所有するクレジットカードに記載されていたカスタマー サービスの電話番号に電話して、銀行(First Bank)クレジットカード を停止する連絡を行う。 1月20日(日) 午後3時30分ごろ アニマルキングダム内のセキュリティサービスマンに、事情を報告し、 その後、カスタマーサービスセンタに行き、紛失届のID番号を貰い、 チケットの再発行(私のチケットからトランザクションをコンピュー タで照会)をして貰う。 (この段階で、上記サービスマンが、警察に行く必要を述べてくれず、 紛失届のID番号で大丈夫との旨を聞き、それを信じたことが、悲劇の 第一歩であった) 2. 第2の事件発生の経緯 1月25日(金) 午後2時30分ごろ フロリダ オーランド国際空港に到着 1月25日(金) 午後3時30分ごろ フライトチケット発券に際し、IDの提示を求められるが、妻は運転免 許証も紛失していた為に、本人証明ができないとの理由から、発券を 拒否される。 以後、時間経緯で発生した事項を述べる。 アニマルキングダムで発行して貰った、紛失届のID番号を述べるが、 本人証明ができないから、発券できないと言われる。 発券カウンターのマネージャーが、空港内の警察に我々を連れて行く が、警察では何もできないとの対応、警察は飛行会社(Frontier)の判 断に任せると言ったきり。 同マネージャが、上位マネージャに相談をしに行き、さらに、その上 位マネージャまで相談が上がるが、写真入りのIDがないと何もできな いと回答。 同マネージャは、アニマルキングダムに連絡。セキュリティサービス マンに、空港に来るように依頼する(結局、来なかった)。 私が、会社のオフィスの同僚に電話。妻のパスポートのコピーを探 してくれるように依頼。同僚全員で、私の机をひっくり返して探し すが、見つからず。 同僚の一人が、デンバーの日本大使館に連絡、デンバー大使館からフ ロリダ オーランドの日本大使館に連絡が行くが、写真入りのIDがど うしても必要となるとの判断で、何もできないとのこと。 上司に、自宅のアパートに踏みこんで貰い、妻のパスポートを探して 貰うように依頼。上司は快諾してくれたが、アパートが合鍵を貸して くれるかどうかの問題が残る。 アパートのリージングオフィスに連絡。事情を説明し、本人証明とし て、来月引越しする *正確な日時* を述べ(必要なら、引越先住所も 言うつもりだったが、聞かれなかった)、上司の名前を述べて、部屋 を開けてもらい、上司のアパート踏み込に立ち会って貰うように依頼。 リージングオフィスは、これを承諾。 上司は、私の自宅の電話を使って、パスポートとそのコピーを発見。 直ちに、自宅のFAXにて航空会社にコピーを送付。しかし、そのコピー は濃度が濃く、妻の顔写真が黒く塗り潰され、認証できないと言い渡 される。 再度、上司に薄いコピーの製作と送付を依頼。今度は認証できると言 われたが、結局、ボーティングには間に合わず(セキュティチェック の列も、軽く200メートルを越えていた)、翌日のフライトに乗せて貰 うことになった。 午後6時30分までの4時間、3人の日本人家族が、チケットカウンター 付近で青くなってうろたえている姿が痛々しかったのか、航空会社の 善意(ここまでは、全て我が家の過失)で、近くのホテルに格安に泊め て貰うことになった。 3. チケット発券の経緯 午前6時30分、ホテルを出発し、7時にチケットカウンターへ。 前日に対応してはずになっている人の名前を聞いておいたが、他の人 も親切に対応してくれて、簡単に発券してくれた。 セキュリティチェックでは、IDの提示を求められなかったが、ボーティ ングの際には求められ、やむなくパスポートのコピーを提示するが、 問題なく通してくれた。 前日の大騒ぎに同情してくれた係員全員の協力で、無事搭乗を成し遂 げることができた、と思われる。 4. 問題点と反省 (1) 昨年9月11日のテロ事件以来、米国では写真入りIDでチケットを発行 してくれるような対応は絶対にない。「そのうち、なんとかしてくれ るだろう」と言う甘い見積もりが通じないことを、見通せなかった。 (2) 運転免許証を失なった段階で、誰が何と言おうが、警察で盗難証明書 を貰う必要があった。しかし、警察でも本人証明が出きなければ、証 明書の発行はできない。従って、運転免許証あるいはパスポートのコ ピーは、全てのバックに一枚づつ入れておくくらいの配慮が必要であっ た。 (3) 今回、上司の助けにより、パスポートのFAXコピーが送られてこなかっ たら、いかなる飛行機にも搭乗できず、陸路でフロリダからコロラド に戻るしかなかったことは、確実である。 (4) よく考えてみれは当然であるが、パスポートのFAXコピーでは、本人 認証は *できないはず* である。今回は、空港内部で、4時間に渡っ てうろたえ、大騒ぎした日本人家族に同情してくれた係員の、*超法 的措置* で助けて貰ったようなものである。 従って、今回の措置は、ノウハウとして全く使えないものであり、上 記(1)(2)の内容を考慮して実施すべきであった。 結論として、紛失、盗難はやむを得ないとして、事後処理を怠ったことが、 今回の事件の原因であると断定せざるを得ない。 5. その他 既に、4.で述べたように、適切な準備(写真入りIDのコピー)と、適切な処理 (警察への早急な届け出)を行っていれば、問題なかったことは述べたが、この ような事態になってしまった時に関して、幾つか助言を頂いたので、ここに述 べておく。 (1) チケット購入元の旅行代理店に連絡すれば、カウンターと交渉してく れるかもしれない。しかし、本人証明が出きないと言う点で、期待で きないと思う。 (2) 写真入りIDのコピーを、予め同僚、上司、知り合いに配っておく。 (3) もし、第3者にパスポートを取ってきて貰えるのであれば、Fedex等を 使って、宿泊ホテルに送って貰う。当日のフライトは当然諦めること になる。 以上