江端です。 haga> 羽賀です。 haga> 「プロジェクトX」、結論から言うとキライです。 haga> 理由は、見ている人ならわかるはずです。 haga> haga> 技術的な話や、また、 haga> それに思い至るまでのエピソードなどは好きですけどね。 後輩のK君にも話していたことですが、「プロジェクトX」は、言わば、技術 をテーマにした、橋田壽賀子ドラマ(http://www.tbs.co.jp/oni/などを見に行 かないように。目が可哀想だから)と位置づけられるものです。 # そう見えないところがミソなんですが。 無論、そのような演出をシニカルに笑いつつも、この番組を楽しむのが、 『粋な技術屋』と言うものでしょう。 また、長期的な展望に立てば、これは、ある種の「熱血学園物語」の技術分 野バージョンとも呼べるものです。 「熱血学園物語」--- 飛び出せ青春、ゆうひが丘の総理大臣、3年B組金八先 生、スクール☆ウォーズ、GTO 。 これらの番組が、一種の社会現象となって、人材が教育界に流れていったこ とは、想像に難くありません # 教育現場を、個人としてのヒロイズムが救えるような幻想を与えた、と言 # う点で、これらの番組は『犯罪的』ですらあるのですが、この点について # は、別の機会にでも。 ----- 技術者の探究心や、フロンティアスピリッツの上で胡座をかき、技術者を なめとんのか! と言うような安い賃金で、骨の随まで働かせる日本のメーカ。 こんな恵まれない(と言うか、美味しさが見えない)技術者の父や母を見て、 子供達が、どうして技術者なんぞになろうと思うだろうか。 技術畑離れの激しいと言われて久しい日本ですが、よっぽどアホな子供でも ない限り、「エジソン」にあこがれて技術者になろうなんて思わんでしょう。 しかし、我々の国、日本が、少なくとも我々の生きている間だけでも、繁栄 を維持するとしたら、「技術大国日本」を維持するしか生きる道はありません。 「プロジェクトX」は、この危機的な状況に出現した、「技術大国日本」存 続の最後のチャンスかもしれません。 と言うより、私は、この番組、「政府主導」(旗を振っているのは、科学技 術庁)でやっているほうに一票。 ## 「原子力プラントのプロジェクト」の話は、時期を待っていると推測。 だって、あれほどの高い演出力、NHKが総力を結集しなればできないと思う し、それに、皆さん気がついていますか。 ミスターVHSの話のところで、『本社への営業利益を改竄して報告した』と 言う独白がありましたが、あれ、「業務上公文章偽造」と言う名前の立派な犯 罪です。 # 国家が後ろ盾にでもならない限り、私なら、墓場までその秘密を持って # いくと思います。 まあ、とにかく、どんな思惑や背景があろうと、「プロジェクトX」は、 「技術大国日本」存続の最後のチャンスである、と同時に、 我々技術者に対して、不当に高い尊敬を向けさせる 最後のチャンスでもあります。 上記一行を、胸に「プロジェクトX」を、世間に広める義務が、我々技術者 にはあります。 ----- とは言え、「プロジェクトX」信奉者の振舞いに、不快な気分を持つことも あるかもしれません。 そんな時には、彼に、こんな話をしてあげると良いでしょう。 ----- もしも「IPA 情報処理振興事業協会 QoS保証対応アクティブネットワー ク プロジェクト (http://www.ipa.go.jp/NBP/digyugoadop.html)」を「プロ ジェクトX」風に演出して見たとしたら ---- 念のため。 これは完全なフィクション(「嘘」付き)です。 (その1) ある日、ネットワーク管理製品の研究を担当していた、日立システム開発 研究所の研究員、三宅(当時3X歳)は、年末の仕事納めの日、密かに部長に呼ば れて、こう告げられた。 (三宅氏の背中と、ピントを外して写されている、部長の顔) 「日立のネットワーク部署を結集して、総力を上げて次世代のインターネット ワークの基本コンセプトとアーキテクチャを考えて欲しい」 そして、部長は続けた 「ただし、期限は一年」 ここで、三宅氏のインタビュー 『いやー、あの時は、目の前が真っ暗になったかと思いましたよ。当時まだ ネットワークと言うのは、単にIPパケット(ここで、IPパケットの説明がテロッ プに写る)を運ぶだけの物、と言う考えかたが一般的でしたから』 (その2) しかし、次世代ネットワークの基本コンセプトは、困難を極めた。 システム開発研究所のネットワーク担当部長の高田、中央研究所で日立の次 世代ルータGR2000を担当していた部長の三村、そして、もう一人、日立中央研 究所の若手研究員、生澤(当時3X歳)は、インターネット上で問題となっていた、 動画像などのマルチメディアデータの配送方式に関して、机の上に広げた、ネッ トワークの構成ブロック図を見ながら、2日目の徹夜に突入していた。 生澤の疲れた頭に、突然あるアイデアがひらめいた。 「いっそうのこと、画像を中継経路にルータに格納してしまっては、どうで しょうか」 二人の部長は、驚いたように生澤を見た。 (その3) システム開発研究所の若きホープ、滝広は、IETFへ提出されたネットワーク プロトコルの仕様書をかたっぱしから読みまくった。 しかし、当時ネットワークの設定情報を転送するプロトコルであるCOPSに関 しては、仕様作成が進んでいたが、その転送する情報の内容のフォーマットに 関する提案は皆無に等しかった。 「無ければ、作るしかない」 滝広は、スキーマの設計に取りかかった。 (その4) この後、新人の羽賀、北脇の両名が、テクニカルオピニオンリーダとして名 を馳せる小泉課長に『抜擢』されてプロジェクトに参入される話など。 ------- と、このように、技術者達の困難な背景で、番組を盛り上げ、最高 潮に達したところで、 江端の緊急入院 にもつれ込みます。 もちろん、塩鮭の骨が喉に引っかかった http://www.ff.iij4u.or.jp/~ebata/bone.txt などの事は、一切述べません。 ----- 組織間のQoSネットワークを構築するための仕様書は、江端に任されていた。 組織間のQoSをプログラム実装する部隊は、江端の考案する仕様書を待って おり、共同提案予定のドイツの研究機関GMDとの打ち合わせは、直前に迫って いた。 江端は決断した。 「ここで仕事を続ける」 部下の北脇は、江端から仕事用のパソコンを病院に運ぶように命じられた。 江端は、点滴を打たれ、鼻から流動食用のチューブを詰めこまれながら、 病室にIETFのドラフトを散らばらせて、ベッドの上でパソコンを使いながら、 仕様書の執筆を続けた。 (ここがクライマックス。病室で、手を震わせながら、息を荒くしながら、 ノートパソコンに向い続ける、江端の再現画像が、中島みゆきの音楽と合わせ て流れる) # でも、これは事実。(手を震わせたり、息を荒くしたりはしなかったけど # さ) ## でも、この仕事を始めてから、看護婦さんが怖がって、私のベッドに来 ## なくなった。 そして、妻、祐子の献身的な看護の話が続く。 ----- 最後は、 生澤、北脇、アメリカフォートコリンズのヒューレットパッカード社で、アメ リカ人の技術者と一緒に、ポリシーエキスパートの開発を、『英語』で議論し ているところ 三宅が、海外のネットワーク研究の学会で、海外のキャリアの技術者からの質 問をスマートに答えているところ 滝広が、日本で2番目のIETFのRFCの策定に成功した新聞ニュース説明 羽賀が、VPNサーバの開発チームに、技術的な指導を与えているミーティング しているところ そして、最後は、江端が、ハルタント博士と、GMDの側の湖の湖畔を散歩しな がら、身振り手振を交えながら、ネットワークの議論をしているところで、中 島みゆきの「地上の星」をエンディングとして、番組終了。 ----- と、まあ、素人の私でもこの程度の演出など朝飯前です。 是非、「プロジェクトX」信奉者の彼に、このメールを送って、感想を聞い てみて下さい。