こんにちは、井上@立川です。 久々の「江端さんのひとりごと」、拝読いたしました。 人間とは不思議なものです。 一瞬にしてあまりに激烈な感動の光に見舞われると、人は、ほのかな笑みを浮か べたまま、自分が何を読んだのかさえ、真っ白に忘れてしまいます。 そこに書いたのは誰か、何が書かれていたか、そして自分は本当にそれを読んだ のか、そんな些末な事柄はもはや、メガトン級真理の爆心地にあっては刹那にし て蒸発するペンペン草の如きものです。 インド最古の経典リグ・ヴェーダはいいます。 「それ、すなわち汝」 真理とは、そこにある。 そして、そこにある真理とは、私のことである・・・。 もう真っ白に忘却した内容から引用してリプライする、というのは、地面に焼き ついたペンペン草の影をこそげ取ろうとするような、一種の惨めさを伴うもので す。しかし、その通りだぁあああ!!! の一言で済むはずもなく、ぽつぽつと 懺悔をするような具合に同意に至った内容を記してみたいと思います。 In[kobore 1819] Mr.Ebata's Small Talk(TOPIC)で、 Digital EBATA, digieba@sanwawood.co.jpさんwrote: > 江端さんのひとりごと > 「TOPIC」  (すみません、ばっさり略します。以後もたびたび) > TomとNancyがこんなテストを受けてびっくりしなかったら、彼らは本当は日 >本人であるのか、日本語何ぞには全く興味がないかのどちらかに違いありませ >ん。 > 大体、「ナンパ」なんて言葉が外国人に分かるかどうか、そして最後の説明 >文などにいたっては、だらだらと一気に一方的に喋られてしまい、問題を解く >ときにはそのヒントすら手元には残っていないのです。正直なところ、ネイティ >ブな日本人でも解けるかどうか怪しいものです。 > こんなテストが、2時間ぶっ続けでしかも休憩がない。 > しかも、内容は日本人にしか分からない状況や専門家にしか分からない用語 >(例えば「バグ」が未定義で使われている)が山ほどあり、しかも、日本人特 >有の性格が分かっていないと、その雰囲気すら理解できないのです。 > このテストの何処に、日本語の能力を計る指標がありましょうか。 --- > 結局私が看破したのは、ようするにTOEICと言う英語テストの位置づけは、 >「外人いじめ」であると言うことです。 > 多くの日本人が、なぜこのような「いじめ」を好き好んで受けに行くのか、 >私には分かりません。 TOEICは学生時代に一度だけ受け、スコアも忘れましたが『大学卒業程度の英語 力』とかいう、しごく当たり前の評価がついて、なぁ〜んだ、と思ったものです。 問題は、駐在時代に受けたドイツ語の検定試験です。 ドイツ語にも、世界統一試験があり、世界中に支部を持つゲーテ・インスティテ ュートが主催する、 ZDaF(ドイツ語基礎統一試験) ZMP(ドイツ語中級統一試験) ZOP(ドイツ語上級統一試験) KDS(ドイツ語小ディプロム試験) GDS(ドイツ語大ディプロム試験) というのがあります。 このうち、上の2つと、大学入学資格のPNdSというのを取ったのですが、 そのうちのZMPというのは、まさに、マゾヒストの為にある試験でした。 ヒアリング・文法・長文読解&論述・ビジネスレタ−作成で全4時間。一週間 後、合格者は(上の一つでも落とせば不合格)2人の試験官と面接があり、そ こで、自分の選んだテーマ(環境問題・青少年犯罪・老人問題など5つから選 択)で20分間にわたって意見を喋り続けなければならない。 ZMPは、死ぬほど難しい。でも、そんなことは、まだいいです。 試験前に、私はあまりの試験勉強の過酷さに、2度ほど「もういやだぁああ〜」 と自宅の床に泣き崩れましたが、それも、終わってしまえば楽しい思い出です。 しかし、長文読解&論述の、長文の内容と設問がどうしても納得できなかった。 試験はテクニックだ、とはよく言われることです。 このZMP(ドイツ語中級統一試験)は、良い成績で合格すると、外国人も就 職に非常に有利、ということで、気骨ある外国人はフォルクス・ホーホシューレ (国営市民講座)の、ZMP試験対策集中コースで、2人の鬼のようなプロフェッ ショナルに3カ月間、徹底的に苛めてもらう、というシステムになっています。 そこでは、試験1カ月前から、過去の試験問題をそのまま使っての模擬試験が 毎回行われ、いちいちスコアと嫌味付きで、解答が返される。 ある時、私は疲れとスコアの悪さで半ノイローゼ状態でした。 長文読解の試験問題--B4版5枚ほどの「建築」をテーマにした長い文章--と、 たまたま間違えて余分に配られた、白紙の解答用紙を持って、同じアパートに住 む管理人の娘で、ザビーネという大学生の女の子を訪ねました。 ネイティブの模範解答が知りたいので、同じ時間で、この試験をやってみてくれ ない? ちゃんとマジメにやってね〜、とか何とかうまく言いくるめて渡しまし た。 50分後、できたよ〜、と持ってきた彼女とお茶を飲みながら本物の模範解答を 傍らにチェックしてみたら、彼女の論述の内容は、質問とチグハグ、シリメツレツ 。 100点満点なら、おそらく30点も取れないところです。 彼女の顔はみるみる青ざめ、私はネイティブ相手に設問の内容と意図を延々と説 明するはめになりました。 こんな質問はおかしい! 意味がわかんない! フェアルックト(狂ってる)!! ザビーネのわめき声をはるか彼方に聞きながら、私は今さらながら、語学試験と いうものの虚しさを噛みしめていました。しかし、だからといって、一旦受ける と決めたものを、やめるわけにもいかないというのが、悲しいところです。 そして、在独20年の、ドイツ人の沢山の良い友人を持ち、日本とドイツの文化 の架け橋としてボランティア活動を続けてきた、私の尊敬するAさんが、このZ MPを2度受けて2度とも落ちた、と聞いたのは、幸いにも試験の後でした。 そして運良く一度で受かった私はというと、ドイツに来てまだ2年半。 語学試験が、コミュニケーション能力とは全く、完全に無関係だという見本です。 それは、『どういう解答が求められているか』を先回りして考える、単なるテク ニックの問題だったのでした。 > だいたい、このようなテストのスコアが良いと言うことは、自分自身が『あ >あああっ!もっとぉ!もっとぉ虐めてぇ〜〜!!』と叫ぶサディスティックな >変態的性癖指向者であることを、満天下に向けて公表しているようなものでは >ないかと、私は考えます。 戦争体験者、同じ部隊に所属して生死を共にした仲というのは、特別な友情で結 ばれているそうですが、この『地獄のZMP奪取作戦』に参加し勝利し、まがり なりにも正気で戻れた日本人隊員達は、今でも深い友情で結ばれています。 あれがどんなに辛い日々だったか、私達は当時を振り返って懐かしく思い出すの ですが、それ以上に困難で「へたすると本気で死ぬ」と噂されているKDS(ド イツ語小ディプロム試験)を受けてみたい、あああ、一度でいいから受けてみた いよなぁぁ〜! と夢見てしまうのは、いったいどうしたことでしょうか・・・。 > > 私が自信を持って世界に向けて提唱するテスト > "TOPIC" > その名も、"Test of PLAYING International Communication" > 「国際コミュニケーション『演劇』テスト」です。 > > 私は、高校の時は有志の劇団に参画、大学の時は京都の名門劇団「そとばこ >まち」のパントマイム教室に参加するという、異色の理系学生でした。 > と言って、決して俳優を目指したわけではなく、ただ漠然とアングラ劇団の >観劇が好きなだけで、気に入ったフレーズはメモに取ったりして日常で使えな >いか考えたりしていた変な学生でした。 あのー、そのパントマイム教室って、「卒塔婆小町」を演じて海外で有名なった、 テアトル・ドラマンゴラミーム・東京という名のパントマイム集団とは関係あり ませんか? 私も、そこのワークショップに参加したことあります。 唐十郎の状況劇場、通称『紅テント』に通い始めたのは、中学生の頃です。新人 だった根津甚八の初々しい演技に拍手し、小林薫の、首に古タイヤをかけて白塗 りにボロをまとった乞食親分の、よく通るテノールの美声に酔いしれたものです。 パントマイムに出会ったのは、高校時代演劇部の部長をやっていた関係で、部員 達の稽古用に、一人で練習し始めたのが、きっかけです。 #大御所マルセル・マルソーの、いわゆるフランス式ミームは、非常に抽象的で  すよね。年を取るにしたがって、彼の演ずるビップの所作は、まるで能のよう  な様式にまで抽象化されて、楽しむというより考えさせる内容だと思い、あま  り好きではなくなってしまいました。対して、ドイツのミームはわりと具体的  なんじゃないかと思います(一度しか観たことないですが。マルソーと同門で  エチェンヌ・ドゥクルーに師事したロルフ・シャッレ)。  あ、マルソーってもうとっくに死んじゃったかな・・・? > このようにTOPIC-Test Of Playing International Communication これは >世界共通にして最高の有効性を持つ、普遍的なコミュニケーションを客観的に >測定するテストであり、前述した3つの条件 >(1)勉強を必要としないこと。 >(2)直感的であること。 >(3)簡単であること > を満たしていると確信しております。 しくしくしく・・・なんって素晴しい・・・!!! ドイツ駐在中に、私達夫婦はある冬期休暇、私の実家の両親とロンドンで待ち合 わせをしました。一緒にクリスマス後の一斉バーゲンで、茶器セットの掘り出し 物を探そう、ということになったのです。 師走も近い、寒い寒いロンドン。私達はタクシー乗り場で順番を待ってました。 昭和ヒトケタ生まれ、伊達の薄着で我慢して、寒そうな素振りを微塵も見せず 端然と胸を張って立っている我がハハ。その後ろに、厚いコートの襟を立てた 白人の中年女性が、やはり順番を待って立っています。 母がその女性に、にっこり微笑んで小首をかしげながら、日本語で言いました。 「寒いですねぇ〜!」 間、髪を容れず、白人女性は大きく頷きながら、にっこり応えるのです。 「Ye〜s,co〜ld!」 「言葉の問題」に拘泥しているあいだは、まだ甘い、と思い知りました。 #この白人女性は、おそらくTOPICで抜群のスコアを獲得するでしょう。 #ところで、どんなに外国語を勉強したところで、母国語以上にうまくなること  は『絶対に』ないという、当り前のことを、昨今の英会話教室に通う若人達は  知っているんでしょうかねー。  おはよう、もロクに言えない、自分自身の意見さえ持ってない、「むかつく」  でしか感情を表現できない、そんなサルガキがイングリッシュでもねーだろっ!  なぁーんて、私などは思ってしまいます。 > 最後に、繰り返します。 > TOEICと言う誤ったいじめの道具から、TOPICと言う真のワールドワイドコミュ >ニケーションの道具を確立するために、皆で協力して立ち上がりましょう。 そう、まずは、柔軟体操なのだっ!!